言語切替

電気グルーヴ: VITAMIN(1993年)

概説

『VITAMIN』(ビタミン)は日本のテクノユニット、電気グルーヴの4作目のアルバムである。

制作の背景

電気グルーヴは静岡拠点のニュー・ウェイヴ/シンセポップ・バンド、人生(ZIN-SÄY!)の元メンバーだった石野卓球(vocals, sampling)、ピエール瀧(vocals, sampling)他を中心として1989年に東京で結成された。

電気グルーヴは1990年にインディーズ・レーベルのSSE COMMUNICATIONSからデビューアルバム『662 BPM BY DG』をリリースした。

1991年にソニー・ミュージックエンタテインメントのトレフォート・レーベルよりメジャーデビューアルバム『FLASH PAPA』をリリース後、電気グルーヴはアシッド・ハウスやパブリック・エナミー(Public Enemy)などのヒップホップ、ポップ・ウィル・イート・イットセルフ(Pop Will Eat Itself)などのオルタナティヴ・ロックに影響されたダンス・ミュージックで知られるようになった。

初期の電気グルーヴは、世相の諷刺や自虐的なユーモアを含むコミカルな日本語の歌詞による石野と瀧のラップ調のヴォーカルと奇抜なパフォーマンスが特徴だった。

1991年に砂原良徳がプログラマー/キーボード奏者として加入し、電気グルーヴは石野、瀧、砂原の3人組となった。その後、電気グルーヴの音楽はより純粋なテクノ/電子音楽へと近づいていった。

解説

アルバム『VITAMIN』は1993年にソニー・ミュージックエンタテインメントのキューン・レーベルから発売され、オリコンチャートで5位を記録した。

本作は電気グルーヴの音楽がより本格的なテクノのスタイルへと発展する上で転換点となったアルバムである。

本作はインストゥルメンタル中心の楽曲を多数収録したアシッド・テクノ風のアルバムである。

アルバム全体がローランドのTB-303を用いて制作されており、1993年に石野が旅行先のロンドンで体験したアシッド・ハウス・リバイバルからの影響を示している。

「Happy Birthday」は女性ヴォーカリストのジャッキー(Jacky)のコーラスを含むアシッド・テクノ風の曲。間奏でヒップホップ・グループのスチャダラパーのシングル曲『Trio The Caps』(1992年)のフレーズがピッチを上げてサンプリングされている。

 「Disco Union」はジャッキーのソウルフルなヴォーカルをフィーチュアしたディスコ・ハウス風の曲。

瀧が作曲した「富士山」はサーフ・ミュージックとテクノを組み合わせたコミカルな曲。

砂原が作曲した「Stingray」はアンビエント・テクノ風の曲。

「Popcorn」はガーション・キングスレイ(Gershon Kingsley)のシンセポップ・クラシック『ポップコーン(Pop Corn)』(1969年)のアシッド・テクノ風カヴァー。

「新幹線」は歌手の五島良子の声をフィーチュアした曲。

「Snow and Dove」はアンビエント風のチルアウトした曲。

「N.O.」はデビューアルバム『662 BPM BY DG』の収録曲「無能の人(LESS THAN ZERO)」のリメイク。石野が作詞作曲した叙情的なシンセポップ曲である。

この曲は1994年にシングルとして発売され、オリコン週間ランキングで21位を記録した。

この曲の「We like the music, we like the disco sound, hey!!」という声はポップ・ウィル・イート・イットセルフのシングル曲『Can U Dig It?』(1989年)からサンプリングされている。PWEIはこのフレーズをベル・エポック(Belle Epoque)のシングル曲『Black Is Black』(1977年)からサンプリングした。ベル・エポックのこの曲はスペインのロックバンド、ロス・ブラボーズ(Los Bravos)のデビューシングル曲(1966年)のディスコ調のカヴァーである。

収録曲

「ハイキング」「Stingray」は砂原作曲、「富士山」は瀧作曲、「Popcorn」はガーション・キングスレイ作曲、それ以外の曲は石野が作曲した。

  1. Happy Birthday – 5:46
  2. Disco Union – 6:38
  3. ハイキング – 5:41
  4. ニセモノ フーリガン – 5:25
  5. 富士山 – 4:37
  6. Stingray – 4:37
  7. Popcorn – 4:37
  8. 新幹線 – 9:58
  9. Snow and Dove – 5:41
  10. N.O. – 4:20