言語切替

第9地区(2009年)

概説

『第9地区(District 9)』は、南アフリカ共和国で難民となったエイリアンたちの強制移住を題材にした2009年のSFアクション映画である。

監督はニール・ブロムカンプ。製作はピーター・ジャクソンとキャロリン・カニンガム。

ニュージーランド、アメリカ合衆国、南アフリカ共和国の共同制作。

ブロムカンプの短編映画『アライブ・イン・ヨハネスブルグ(Alive in Joburg)』(2006年)を翻案した作品である。112分。

あらすじ

1982年、地球外の巨大な宇宙船が南アフリカ共和国のヨハネスブルグの上空に出現し、空中で静止する。調査隊は、船内で100万体以上のエビに似たエイリアンを発見する。

南アフリカ政府は、エイリアンを「第9地区」と呼ばれる区域の収容施設に難民として閉じ込める。第9地区はその後スラム化し、「エビ(Prawns)」と呼ばれるエイリアンと地域住民の間でトラブルが多発する。

宇宙船の出現から28年後、南アフリカ政府はエイリアンを郊外の新しい隔離区域(第10地区)に強制的に移住させることを決定し、移住計画の実行を巨大な武器製造会社のMNU(Multi-National United)に一任する。

MNU南アフリカの取締役のピエト・スミット(ルイス・ミナー)は、義理の息子でMNUのエイリアン対策課職員のヴィカス・ファン・デ・メルヴェ(シャールト・コプリー)を移住計画のリーダーに任命する。

エイリアンを立ち退かせるために第9地区を訪れたヴィカスは、謎の液体が入った容器を小屋の中で発見し、持ち帰る。液体を誤って顔に噴射してしまったヴィカスは、その後、左腕からエイリアンに変異し始める。

MNUは移住計画の裏で、エイリアンのDNAによってしか動作しないエイリアンの兵器類の研究を極秘裏に進めていた。ヴィカスがDNAの変異によってエイリアンの兵器を操作できるようになったことを発見したMNUは、ヴィカスが持ち帰った液体を押収し、研究のためにMNUの研究所でヴィカスを生体解剖しようとする。

ヴィカスは研究所から脱走する。MNUはヴィカスがエイリアンとの交尾によって伝染病にかかったという虚偽の情報を発表し、ヴィカスを捜索する。

第9地区に身を隠したヴィカスは、クリストファー・ジョンソンと呼ばれているエイリアンが小屋の地下に司令船を隠していることを発見する。

クリストファーによると、ヴィカスが持ち去った液体はエイリアンの宇宙船の燃料で、それはクリストファーが地球脱出のために20年かけて集めたものだった。クリストファーはヴィカスに、液体燃料を使って司令船を再起動できれば、ヨハネスブルグ上空の母船でヴィカスの突然変異を元に戻せると説明する。

第9地区に住むナイジェリア人のギャング集団のリーダーのオビサンジョ(ユージーン・クンバニワ)は、エイリアンの武器を収集していた。オビサンジョから武器を奪取したヴィカスは、クリストファーとともに、武器を持ってMNUの研究所に侵入し、液体燃料を奪還しようとする。

解説

『第9地区』は、人種差別や排外主義、社会的分離などの政治的なテーマを扱った娯楽的なSF映画である。実在する兵器やロボットスーツなどが登場する軍事アクション映画でもある。

本作の設定は、アパルトヘイト時代のケープタウン第6地区からの強制移住や難民問題などの、南アフリカの歴史上の出来事から着想を得ている。

本作の一部は、架空のインタビューやニュース映像、ビデオ映像などを含む、疑似ドキュメンタリーあるいはファウンド・フッテージ風のシークエンスで構成されている。

本作は第82回アカデミー賞で、作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞の4部門にノミネートされた。

映画「第9地区(District9)」予告編(日本語字幕)