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最も危険な遊戯(1978年)

概説

『最も危険な遊戯』は、松田優作が主演し、村川透が監督を務めた1978年の日本のアクション映画である。

東京を舞台に、大企業から誘拐された人物の救出を依頼され、国防省の防空警戒システムの開発の受注契約をめぐる二大企業間の勢力争いに巻き込まれるプロの殺し屋、鳴海昌平(松田優作)の命を懸けた戦いを描いている。

製作は東映セントラルフィルムと東映芸能ビデオ。配給は東映。

脚本は永原秀一。撮影は仙元誠三。音楽は大野雄二。

シネマスコープ。89分。

制作の背景

東映本社が「プログラムピクチャー」(二本立て用に量産される映画)から大作映画へと力点を移したため、東映は1977年にプログラムピクチャーの制作・配給のための子会社として東映セントラルフィルムを設立した。

日活でロマンポルノ作品のプロデュースを手がけていた黒澤満は日活を退社後に東映セントラルフィルムの制作部門のプロデューサーに就任し、本作を東映セントラルフィルムの第一作として3000万円の予算で製作した。

黒澤ともう一人のプロデューサーの伊地智啓は、1972年に日活でロマンポルノ作品3本を監督した村川透を監督に、日本テレビ系の刑事ドラマ、『太陽にほえろ!』(1972–1986年)と『大都会』シリーズ(1976–1979年)への出演で知られていた松田優作を主演俳優に、それぞれ起用した。

村川は『大都会』シリーズの監督の一人として松田と一緒に仕事をしていた。

あらすじ

31歳の鳴海昌平(松田優作)は裏社会で凄腕の殺し屋として知られていた。

財界の要人が何者かによって相次いで誘拐され、東日電気社長の南条(入江正徳)も誘拐される。東日グループの会長の小日向(内田朝雄)は鳴海に南条を謝礼5千万円で救出してほしいと依頼する。

東日グループは国防省の防空警戒システムの開発の受注契約をめぐる競争で五代コンツェルンに勝ち、受注を獲得したが、五代は東日グループから受注を奪回するために黒幕の足立精四郎(見明凡太郎)と共謀して誘拐事件を引き起こしていた。

小日向は鳴海に、足立の懐刀で誘拐犯のグループを率いている居郷(名和宏)に関する情報を教える。

鳴海は居郷のマンションに侵入する。マンションには居郷の愛人の杏子(田坂圭子)が一人でいた。鳴海は居郷の居場所を言わないと殺すと言って杏子を脅す。

鳴海は電話で居郷と話しながら杏子をレイプして居郷をマンションにおびき寄せる。

鳴海は南条が監禁されている廃病院に忍び込む。鳴海は居郷を含む誘拐犯のグループ全員を射殺し、南条を救出するが、南条は何者かによって射殺され、鳴海は銃撃戦で腹部に重傷を負う。

鳴海は小日向に前金の1千万円を返しに行くが、小日向は鳴海に足立の暗殺を依頼する。

鳴海は足立を暗殺しようとするが、警視庁の桂木警部(荒木一郎)が足立と共謀して一連の事件に関与していることを知る。桂木は鳴海を始末しようとする。

鳴海は生き残りを懸けて桂木とその仲間の刑事たちと対決する。

受容

『最も危険な遊戯』は1978年に小林旭主演、鈴木則文監督の映画『多羅尾伴内』(1978年)と併映で二本立てとして公開され、興行的なヒット作となった。

公開当時、本作は蓮實重彥、山田宏一、山根貞男などの日本の映画評論家たちによって高く評価された。

蓮實は日本の映画雑誌『映画芸術』誌上で、ジョージ・ルーカス監督の映画『スター・ウォーズ』(1977年)よりも本作の方があらゆる点で優れていると述べて本作を激賞した。

本作の成功を受けて『殺人遊戯』(1978年)と『処刑遊戯』(1979年)の二つの続編が制作された。この3作品は「遊戯シリーズ」と呼ばれている。

日本国内では2017年に東映から遊戯シリーズのブルーレイBOXが発売された。

遊戯シリーズの限定版ブルーレイが2023年にUK/USアロービデオから発売された。

解説

『最も危険な遊戯』はプログラムピクチャーとして製作された低予算の娯楽映画である。本作は日活のアクション映画とロマンポルノ作品の流れを汲んでいる。

本作は松田の鍛え上げられた肉体と優れた運動能力を活かしたアクション映画の傑作であり、村川の日活時代の監督デビュー作である『白い指の戯れ』(1972年)と並ぶ村川の傑作の一つである。

本作では、主人公の鳴海は普段はどてらに丸サングラスという珍妙な格好で雀荘やストリップ小屋に出入りするだらしない男だが、殺人を請け負って大金を稼ぐプロの殺し屋でもあるという、二つの顔を持つ人物として描かれている。

映画自体も、ネオ・ノワール風のハードボイルドな犯罪アクション映画であり、かつそのジャンルの自己破壊的なパロディーでもあるという二重性を持っている。

ダイナミックなカメラワーク、独特の青みを帯びた色調、手持ちのカメラで撮影された長回しのアクションシーンが本作の特徴である。

銃撃戦のシーンと鳴海が桂木の車を走って追いかけるシーンが本作の見どころである。

当時『ルパン三世』のTVアニメシリーズ第2作(1977–1980年)の音楽を担当していた大野雄二によるジャズ・フュージョン風の音楽が印象的である。

本作は東京都内の各所、渋谷、代々木、中野、霞が関、六本木、目黒、芝浦埠頭などでロケーション撮影された。

本作は女性の裸体や性行為、性的暴行の露骨な描写を含んでいるので注意が必要である。

本作では杏子が自分をレイプした鳴海に恋心を抱く。鳴海は桂木に拉致された杏子を救い出し、鳴海と杏子は埠頭で抱き合う。この恋愛エピソードは男性にとって都合が良いように作られており、当時の日本社会の男性中心主義を反映している。

鳴海が使用している回転式拳銃は、映画『ダーティハリー』(1971年)でハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)が.44マグナム弾とともに使用したことで有名になったスミス&ウェッソンM29である。

本作の結末部で鳴海は小日向に「素敵なゲームをありがとう」と言っているが、これは松田によるアドリブの台詞である。

松田が出演した角川映画『人間の証明』(1977年)が結末部のストリップ小屋のシーンで引用されている。主題歌がBGMとして使われ、ダンサーがキーアイテムの麦わら帽子で局部を隠しながら踊っている。

‎The Most Dangerous Game (1978) Original Trailer [FHD]