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久保田麻琴と夕焼け楽団: ハワイ・チャンプルー(1975年)

概説

『ハワイ・チャンプルー』は、日本のミュージシャン、久保田麻琴(lead vocals, acoustic guitar)が1975年に「久保田麻琴と夕焼け楽団」名義でリリースしたアルバムである。

制作の背景

久保田麻琴は1949年に京都で生まれた。

久保田は同志社大学在学中の1970年にソロ・デビューし、ロックバンド「裸のラリーズ」のメンバー(guitar)としても活動を始めた。

久保田は1970年代に裸のラリーズの活動と並行して自身のバンドの夕焼け楽団を率いて活動していた。

初期の夕焼け楽団はブルースやジャズ、R&B、カントリーの要素を取り入れたロックバンドだった。

久保田はアルバム『サンセット・ギャング』のリリース後の1974年にアメリカ合衆国と沖縄を訪れ、ハワイと沖縄の音楽に強い感銘を受けた。

久保田はその時沖縄の西表島で、1972年にシングルとして発売されウチナーポップ(沖縄の現代ポピュラー音楽)のローカルヒット曲となっていた喜納昌吉&チャンプルーズの「ハイサイおじさん」を初めて聴いた。

これらの体験がハワイと沖縄の音楽を結び付けるという着想の源となり、このコンセプトに基づいてアルバム『ハワイ・チャンプルー』が制作された。

参加ミュージシャン

夕焼け楽団

  • 久保田麻琴 – lead vocals, acoustic guitar
  • 井上憲一 – guitar
  • 藤田洋麻 – guitar, mandolin
  • 恩蔵隆 – bass

ゲストミュージシャン

  • 駒沢裕城 – pedal steel guitar
  • 細野晴臣 – drums
  • 国府輝幸 – keyboards

解説

アルバム『ハワイ・チャンプルー』は1975年にホノルルのサウンズ・オブ・ハワイ・スタジオで録音され、同年にトリオレコードのショーボート・レーベルから発売された。

歌詞は主に日本語で一部英語と沖縄語(ウチナーグチ)。

「チャンプルー」は「ごちゃまぜ」を意味する沖縄の言葉で、通常は沖縄の炒め物料理を指す言葉として使われている。

タイトルが示す通り、本アルバムはフラ(ハワイの歌舞音曲)、ニューオーリンズR&B、ウチナーポップ、マリアッチ(メキシコの楽団演奏)などの要素を混ぜ合わせることによって制作されている。

久保田麻琴が細野晴臣と共同で本アルバムのプロデュースを務めた。

細野に喜納昌吉&チャンプルーズの「ハイサイおじさん」を聴かせてウチナーポップを紹介したのは久保田である。

本アルバムのコンセプトは当時の細野のエキゾティカ風の音楽に影響を与えた。細野はその後、1970年代に「トロピカル三部作」と呼ばれたエキゾティカ風の3枚のアルバム、『トロピカル・ダンディー』(1975年)、『泰安洋行』(1976年)、『はらいそ』(1978年)を制作した。

「スティール・ギター・ラグ」はレオン・マッコーリフ作曲のウエスタン・スウィング曲をカヴァーしたインストゥルメンタル曲。

「ムーンライト・フラ」はハワイのフラをベースにして久保田が書いた曲。

「ウォーク・ライト・イン」はガス・キャノン作曲のカントリーブルース曲のカヴァー。

「ハイサイおじさん」は喜納昌吉&チャンプルーズによるウチナーポップの先駆的な名曲のカヴァー。イントロで沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」が引用されている。

「いつの日お前は」はアメリカのブルース、ブギウギのピアニスト兼歌手のチャンピオン・ジャック・デュプリーの曲のカヴァー。

「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」はジェシー・フラー作曲のフォークソングのカヴァー。

「上海帰り」はフォークシンガーの南正人のシングル曲の中華風アレンジによるカヴァー。

「バイ・バイ・ベイビー」は細野作曲のニューオーリンズR&B風の曲。

「国境の南」(South of the Border)はジミー・ケネディ作詞、マイケル・カー作曲の1939年のポピュラーソングのカヴァー。

「バイ・バイ・ベイビー」/「初夏の香り」は1975年にシングルとして発売された。

2020年に本アルバムのデジタル・リマスター版(deluxe edition)がボーナストラック2曲とリミックス盤「MADE IN ISLAND Vol.2」を含む2枚組CDとしてソリッド・レコードから発売された。

Wewantsounds(フランス)は2021年に、久保田が1973–1977年に夕焼け楽団とともに録音した『ハワイ・チャンプルー』を含むアルバム3作品をデジタル・アルバムとLPで発売した。

ムーンライト・フラ [2020 Remaster]
ハイサイおじさん [2020 Remaster]