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冬物語(1992年)

概説

『冬物語(Conte d’hiver)』は、手違いによって恋人と生き別れになった女性が主人公の1992年のフランスのドラマ映画である。監督・脚本はエリック・ロメール。ロメールによる「四季の物語」の第2作である。114分。

あらすじ

フェリシー(シャルロット・ヴェリ)は夏の休暇中にブルターニュのモルビアン湾で若い調理師見習いのシャルル(フレデリック・バン・デン・ドリエッシュ)と恋に落ち、2人は情熱的に愛し合う。しかし、フェリシーがルヴァロワ(Levallois)とクルブヴォア(Courbevoie)を混同してシャルルに自分の住所を誤って伝えたため、2人はお互いに連絡が取れなくなってしまう。

5年後の12月14日、フェリシーは年上の男性のマクサンス(ミシェル・ボレッティ)が経営する美容院で美容師として働きながらパリで母と暮らしていた。フェリシーはシャルルとの間にできた5歳の娘のエリーズを育てていた。

エリーズの部屋にはシャルルの写真が飾られていた。

フェリシーはシャルルと再会できるかもしれないという一縷の希望を持ち続けていたが、しかしその一方で、2人の恋人と付き合っていた。フェリシーは妻がいるマクサンスと恋愛関係にあり、図書館員のロイック(エルベ・フュリク)とも付き合っていた。

マクサンスは妻と離婚してパリから生まれ故郷のフランス中央部のヌヴェールに引っ越し、そこで美容院を経営しようとしていた。フェリシーはエリーズを連れてマクサンスについて行くことを決意する。

マクサンスはフェリシーが来る前にヌヴェールに引っ越して美容院を開業する。

12月16日の日曜日、ヌヴェールにやって来たフェリシーはマクサンスと一緒に町を見て回る。2人は聖ジルダール修道院を訪れ、教会堂のガラスの聖遺物箱に安置されている、「ルルドの聖母の出現」の体験で知られる聖ベルナデッタの遺体を見る。

フェリシーはロイックの家を訪れる。ロイックは輪廻転生(生まれ変わり)を信じている女友達のエドゥヴィージュと議論をしている。ロイックの友人たちが帰った後、フェリシーはロイックに別れを告げる。

フェリシーはクリスマスの直後にエリーズを連れてヌヴェールに引っ越し、マクサンスの美容院で働きながらマクサンスと一緒に暮らし始める。

しかし、フェリシーとマクサンスの共同生活は長くは続かなかった。

マクサンスは、子育てをしながら働いているために仕事に集中できないフェリシーに対して不満を募らせる。

エリーズを連れて聖ジルダール修道院の教会堂を訪れたフェリシーは、自分がシャルルを愛するようにはマクサンスを愛することができないことに気付く。

フェリシーはマクサンスのもとを去り、エリーズを連れてパリに戻って来る。

フェリシーは図書館で仕事中のロイックに会いに行く。その夜、フェリシーはロイックとともにウィリアム・シェイクスピアの劇『冬物語』を観劇し、王妃ハーマイオニが蘇る場面に感動して涙を流す。

ロイックはフェリシーを自分の車に乗せて帰宅する。車の中でフェリシーはロイックに、奇跡の再会に人生を賭けると言い、シャルルとの再会を諦めていないことを告げる。フェリシーは魂の不滅について話す。ロイックはフェリシーの考えを、神の存在に対する「パスカルの賭け」やプラトンの想起説などの哲学的な議論と関連付ける。

12月31日、ロイックはフェリシーに、自分の家で夜を過ごさないかと誘うが、フェリシーはそれを断り、エリーズを連れて買い物をした後に帰宅する。帰りのバスの中でフェリシーとエリーズはカップルの向かいの席に座る。カップルの男性の方がフェリシーに気付いて声をかける。その男性はシャルルで、隣の女性はシャルルの旧友のドラだった。

解説

『冬物語』は、シェイクスピアのロマンティックな悲喜劇『冬物語』から着想を得たドラマ映画である。シェイクスピアの『冬物語』は本作で劇中劇としても登場する。

本作は一人の女性の喪失と再会の物語を一種の寓話として描いている。フェリシーは最愛の人であるシャルルと生き別れになるが、再会できるという信念を持ち続けた結果、奇跡または幸運な偶然によってシャルルと再会する。

本作では、信仰というテーマがロマンティックな愛の物語と結び付いている。

本作はそのテーマとプロットにおいて、ロメールの初期の傑作『モード家の一夜』(1969年)に類似している。

本作は意図的に16ミリフィルム(スーパー16)で撮影された映像が35ミリに引き伸ばされているため、画像の粒子が粗くなっている。

鮮やかな夏の場面と灰色を基調とする冬のパリの場面の色彩の対比が印象的である。

本作は1992年に第42回ベルリン国際映画祭に出品され、国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)を受賞した。

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