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矢野顕子: ごはんができたよ(1980年)

概説

『ごはんができたよ』は、日本のシンガーソングライターの矢野顕子(vocals, piano)による4作目のスタジオ録音アルバムである。

1978年から1980年代中頃にかけて、矢野はイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)のメンバー3人、細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一と緊密な共働関係にあった。

細野、高橋、坂本は1978年に矢野の「ト・キ・メ・キ ツアー」(アルバム『ト・キ・メ・キ』発売後のコンサートツアー)にサポートメンバーとして参加していた。

矢野は本作のレコーディングの前にYMOの第1回ワールドツアー(1979年)にサポートメンバー(keyboards, backing vocals)として参加していた。

矢野は本作のリリース後にYMOの第2回ワールドツアー(1980年)にも参加した。

本作は東京のアルファレコードのスタジオAとロサンゼルスのサウンド・シティで録音され、1980年に徳間ジャパンコミュニケーションズのレーベルのジャパンレコードから2枚組LPとして発売された。

収録曲は全14曲。収録時間は74分04秒。

YMOのメンバー3人、細野(bass)、高橋(drums, syn-drums)、坂本(synthesizer, vocoder, piano, electronic piano, organ, syn-drums)が本作のレコーディングに全面的に参加した。

矢野と坂本は共同で11曲の編曲を担当し、アルバムのプロデュースを行った。

当時YMOの「4人目のメンバー」として知られていたコンピュータ・プログラマーの松武秀樹がローランドのMC-8のオペレーションを担当した。

歌詞は主に日本語。「COLOURED WATER」と「HIGH TIME」は英語。「YOU’RE THE ONE」は一部英語。

『ごはんができたよ』は矢野がYMOと緊密な共働関係にあった時期の傑作であり、坂本が編曲とプロデュースを担当した作品群の中でも最も高く評価されている作品の一つである。

YMOが全面的に参加して制作されたエレクトロ・ポップ寄りのアルバムだが、シンセとアコースティックピアノやベース、ドラム、ギターなどのアナログ楽器を組み合わせた有機的なサウンドになっている。

本アルバムの特徴は矢野の柔軟な音楽性である。矢野は本作で、自由奔放なピアノの弾き語りを軸として、キャッチーなポップソングやジャズの要素、エレクトロ・ポップ、ニュー・ウェイヴ、日本の民謡や童謡などのさまざまなスタイルを楽曲に導入している。

矢野は優れたアルバムを数多く録音しているが、その中でも本作は音楽性の高さと楽曲の完成度という点で際立っている。

1982年にジャパンレコードから発売された最初のCDと1986年にミディから発売されたCDでは「COLOURED WATER」「HIGH TIME」「DOGS AWAITING」「青い山脈」の4曲がカットされており、10曲しか収録されていなかった。ミディは1989年に14曲入りのCDを発売した。

ミディは2015年に本アルバムのリマスター版をSHM-CDで発売した。リマスターはYMO関連のレコーディングのエンジニアとして知られる小池光夫が担当した。

Wewantsounds(フランス)は2020年に小池光夫によるリマスター版を2枚組LPとCDで発売した。

収録曲

1. ひとつだけ / HITOTSUDAKE(矢野, 5:13)

矢野が香港出身の日本の歌手、アグネス・チャンのアルバム『美しい日々』(1979年)のために書いた叙情的なラブソングのセルフカヴァー。3rdシングル「ごはんができたよ」(1980年)のB面曲としてリリースされ、その後矢野の代表曲の一つとなった。

2. ぼんぼんぼん / LES PETIT BONBON(矢野, 6:17)

「ひとつだけ」からメドレーで演奏されるキャッチーなポップソング。

3, COLOURED WATER(矢野, 6:17)

英語の歌詞とエレクトロニックピアノ、シンセストリングスをフィーチュアした静かな曲。ドラムとコーラスを含むパートで終わる。

4. 在広東少年 / ZAIKUNTONG SHONEN(矢野, 6:26)

大村憲司のギターをフィーチュアしたニュー・ウェイヴ風の曲。この曲はYMOの第1回・第2回ワールドツアーで演奏された。

5. HIGH TIME(矢野, 5:17)

英語の歌詞とアコースティックピアノの弾き語りをフィーチュアした、「COLOURED WATER」に似たスタイルの静かな曲。

6. DOGS AWATING(矢野, 7:35)

犬の吠える声のサンプリングとヴォコーダーを通した矢野のヴォーカルを含む実験的なエレクトロ・ポップ曲。

7. TONG POO(坂本, 4:24)

YMOのデビューアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』(1978年)の収録曲のカヴァー。矢野が新たに日本語の歌詞を書いた。

8. 青い山脈 / AOI SONMYAKU(服部良一, 4:05)

服部良一が映画『青い山脈』(1949年)の主題歌として歌手の藤山一郎と奈良光枝のために書いた曲のカヴァー。

9. げんこつやまのおにぎりさま / GENKOTSUYAMA NO ONIGIRISAMA(小森昭宏, 8:35)

小森昭宏が作曲した童謡を基にしたニュー・ウェイヴ風の曲。ひばり児童合唱団とシーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠のギターをフィーチュアしている。

10. ごきげんわにさん / GOKIGEN WANISAN(小森昭宏, 3:02)

この曲も小森昭宏が作曲した童謡が基になっている。矢野と坂本のピアノ連弾を含んでいる。

11. また会おね / MATA AONE(矢野, 4:10)

別れの切なさを歌った叙情的なポップソング。

12. てはつたえる→てつだえる / TE WATSUTAERU→TETSUDAERU(矢野, 4:20)

谷川俊太郎の詩「TE TE TE」にインスパイアされた曲。この曲は日立製作所のコマーシャルソングとして使用された。

13. ごはんができたよ / GOHAN GA DEKITAYO(矢野, 5:31)

3rdシングルとしてリリースされた曲。日本の民謡のようなメロディーを導入している。歌詞の一部はマタイ福音書を参照しており、曲のクレジットで矢野はマタイの第5章の45–46節に謝辞を述べている。

14. YOU’RE THE ONE(坂本, 4:26)

坂本が作曲した美しいバラード。

AKIKO YANO "TONG POO" from "GOHAN GA DEKITAYO" (1980) OUT NOW ON WEWANTSOUNDS