概説
『処女の泉(Jungfrukällan)』はイングマール・ベルイマン監督の1960年のスウェーデンのドラマ映画である。中世のスウェーデンを舞台に、娘を強姦し殺害した男たちに父親が復讐する物語を描いた残酷で美しい映画である。89分。
撮影監督はスヴェン・ニクヴィスト。
あらすじ
敬虔なキリスト教徒で裕福な地主のテーレ(マックス・フォン・シドー)とその妻のメレータ(ビルギッタ・ヴァルベルイ)は、娘のカーリン(ビルギッタ・ペテルソン)に教会に寄進物の蝋燭を届けるように言いつける。カーリンは妊娠中の召使いのインゲリ(グンネル・リンドブロム)を連れて教会に向かう。インゲリは密かに北欧神話の神オーディンを崇拝しており、美しくて無垢なカーリンを妬んでいる。
カーリンは森の中でヤギを連れた三人兄弟(二人の男と一人の少年)に出会う。二人の男はカーリンを強姦し殺害する。インゲリはその一部始終を目撃するが、カーリンを見殺しにする。
三人兄弟がカーリンを殺したことを知ったテーレは、末っ子の少年を含む三人兄弟全員を殺害する。
解説
物語は13世紀のスウェーデンのバラッド『ヴェンゲのテーレの娘』を下敷きにしている。
黒澤明の映画『羅生門』(1950年)の影響が顕著である。
本作はスウェーデンにおける古い北欧の宗教(北欧神話の崇拝)と新しいキリスト教信仰の共存を歴史的背景として、神の沈黙、罪悪感、贖罪といったテーマを扱っている。
アカデミー賞外国語映画賞受賞作。
ウェス・クレイヴン監督のホラー映画『鮮血の美学』(1972年)は本作のプロットを下敷きにしている。