言語切替

クローズ・アップ(1990年)

概説

『クローズ・アップ(نمای نزدیک)』は、実際に起こった詐欺事件を題材にした1990年のイランのドキュフィクション(フィクションの要素を含むドキュメンタリー)映画である。

脚本・監督・編集はアッバス・キアロスタミ。言語はペルシア語。100分。

解説

キアロスタミはハッサン・フラズマンドという名の記者が書いたある雑誌記事に興味を引かれる。その記事によると、ホセイン・サブジアンという名の無職の男が映画監督モフセン・マフマルバフの名を騙って、テヘラン北部に住む中産階級のアーハンハー一家に対して詐欺を働いた廉で逮捕されたという。キアロスタミは刑務所にいるサブジアンに面会に行き、アーハンハー一家のインタビューを行い、サブジアンの公判を撮影する。

本作は公判を撮影したモノクロの映像を含むドキュメンタリーのパートと、サブジアン、フラズマンド、アーハンハー一家を含む事件の関係者たちがそれぞれ自分自身を演じた再現ドラマのパートで構成されており、その結果として、虚実が入り混じった不思議な映画となっている。

この事件でサブジアンは、アーハンハー一家の人々に、彼らの家を撮影場所として、彼らの息子たちを俳優として使って新作映画を撮るという嘘を信じ込ませている。容疑者と被害者がともに映画愛好者で、映画監督として敬愛されたいサブジアンと、映画関係の仕事がしたいアーハンハー家の次男が相互に依存することによって詐欺が成立しているのが興味深い。

刑務所から釈放されたサブジアンが本物のモフセン・マフマルバフと対面する最後のシークエンスが印象的である。

Scene from "Close-Up"