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ズーム・イン 暴行団地(1980年)

概説

『ズーム・イン 暴行団地』は、日活ロマンポルノの一作として制作された1980年の日本のバイオレンス・ポルノ映画である。

1972年に日活に入社し、1970年代に数多くのロマンポルノ作品で助監督を務めていた黒沢直輔の監督デビュー作である。

集合住宅が建ち並ぶ東京郊外の新興住宅地を舞台に、女性を狙った連続猟奇殺人事件をジャッロのようなスタイルで描いている。

本作は露骨な性描写と残酷な暴力描写を含んでいる。

主演は宮井えりな。

製作は中川好久。

脚本は桂千穂。

撮影は森勝。

音楽は高田信。

配給はにっかつ。

ワイドスクリーン。68分。

あらすじ

専業主婦の冴子(宮井えりな)は競輪選手の夫の功一(松風敏勝)と団地の一室で暮らしていた。

功一が地方のレースに出場するために家を離れている間に、冴子は昔の恋人の隆也(志賀圭二郎)に会いに行く。

ピアノ調律師の隆也は近くの団地に引っ越してきたばかりだった。

自転車に乗って隆也が住む団地に向かっていた冴子は、空地で黒ずくめ(トレンチコート、帽子、レザーグローブ)の男に襲われる。

その男は千枚通しのような凶器で脅しながら冴子に目隠しをして冴子を強姦する。

冴子は隆也と5年ぶりに再会する。冴子は隆也と性的な関係を持つ。

黒ずくめの男は隆也が住む希望ヶ原団地で女性を狙った連続殺人事件を起こす。

黒ずくめの男は女子高生(山地美貴)を襲い、局部に揮発油を滲み込ませた脱脂綿を詰めて火をつけ、焼き殺す。

翌日、皮膚が焼けただれた別の女性の全裸死体が公園のジャングルジムに縛り付けられているのが発見される。

殺害された女子高生の父親は正気を失い、団扇太鼓を叩いて仏教の題目「南無妙法蓮華経」を唱えながら歩き回る。

黒ずくめの男は建設中の団地で別の女性を襲い、焼き殺す。冴子は男が現場から逃走するのを目撃する。

黒ずくめの男が逃走中にハンマーフェルトピッカー(ピアノ調律用の千枚通しのような道具)を落としたため、冴子は隆也が連続殺人犯ではないかと疑う。

フーテン娘のまゆ子(大崎裕子)は黒ずくめの男が全裸の女性(若い主婦)をごみ焼却炉に放り込むのを目撃する。

冴子は模型店を経営している女友達の沙智(梓ようこ)と会い、沙智と性的な関係を持つ。

黒ずくめの格好をした隆也は建設中の団地の空き部屋でまゆ子を襲い、焼き殺そうとするが、冴子は隆也を制止する。

隆也は冴子に、連続殺人犯は自分ではないということをほのめかす。

まゆ子は団地の屋上に上がり、11階の中林隆也が連続殺人犯だと叫ぶ。

隆也は屋上でまゆ子を強姦する。隆也とまゆ子は屋上から転落して死ぬ。

冴子の夫の功一が家に帰ってくる。冴子は元の生活に戻る。

自転車に乗っている冴子は路上で妊婦とすれ違う。

妊婦が火だるまになる。冴子は黒ずくめの男(影山英俊)が走り去るのを目撃する。

解説

『ズーム・イン 暴行団地』は小原宏裕監督の『ズームアップ 暴行現場』(1979年)に続く日活のバイオレンス・ポルノ映画の第2弾として制作された。

日活で『団地妻 昼下りの情事』(1971年)を含むロマンポルノ作品を数多く監督していた西村昭五郎が本作の監督を務める予定だったが、脚本を読んだ西村が監督を辞退したため、黒沢が監督に抜擢された。

『ズーム・イン 暴行団地』はジャッロ、特にダリオ・アルジェントの作品に強い影響を受けたポルノ映画である。

サイコスリラーまたはサイコホラー映画として観賞できる、日活のロマンポルノ作品の中では異色の作品である。

地面に滴り落ちたヒロインの愛液が燃え上がるシーンに見られるように、本作における炎は、日常生活において隠され、抑圧されている性的な欲望の暗喩になっている。

ストーリー展開よりも視覚的なインパクトを重視する本作のシュールなスタイルは、『殺しの烙印』(1967年)などの鈴木清順の前衛的な映画に似ている。

妊婦が火だるまになる結末部のシーンが印象的である。

本作は東京の多摩ニュータウン(多摩市豊ヶ丘周辺)でロケーション撮影された。

本作は宅地造成や荒野のような空地、建設中の団地群などの、1960年代以降のニュータウン開発期の日本で見られた特徴的な風景を捉えている。

本作は1980年に日本で成人向け映画として劇場公開された。

日本では2006年にジェネオンエンタテインメントが本作のDVDを発売した。

米国シナプス・フィルムズの派生レーベルのインパルス・ピクチャーズは2012年に本作の英語字幕入りDVDを『Zoom In: Sex Apartments』というタイトルで発売した。