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鬼火(1963年)

概説

『鬼火(Le Feu follet)』は、自殺を考えているアルコール依存症の男を描いた1963年のフランスのドラマ映画である。監督・脚本はルイ・マル。脚本は、ダダイスム/シュルレアリスムの詩人ジャック・リゴーの生涯から着想を得たピエール・ドリュ=ラ=ロシェルの小説『ゆらめく炎』(1931年)を下敷きにしている。モノクロ。108分。

あらすじ

アルジェリア戦争の元将校でインテリの男、アラン・ルロワ(モーリス・ロネ)は、以前は妻のドロシーとともにニューヨークに住んでいたが、アルコール依存症の治療のためにドロシーを置いてフランスに帰国していた。

ヴェルサイユの病院に入院し、アルコール依存症は完治したが、大人になり年を取ることを拒絶するアランは人生に絶望し、自殺することを決意する。

アランは自殺決行の前日にパリで友人たちを訪ねる。家庭生活に安住するプチブルの友人や、極右軍事組織OASのメンバーとして活動する友人たちと再会するが、彼らに共感することができず、アランは虚無感を募らせてゆく。

解説

映画の構造と作風はアニエス・ヴァルダの『5時から7時までのクレオ』(1962年)に似ている。アランがパリをさまようシークエンスは、ロケーションでドキュメンタリー風に撮影されている。

エリック・サティのピアノ音楽、『ジムノペディ』と『グノシエンヌ』が劇伴として使用されている。

本作は1963年のヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。