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五毒拳(1978年)

概説

『五毒拳(中国語原題:五毒)』は、ショウ・ブラザーズ製作、チャン・チェ(張徹)監督の1978年の香港の格闘技映画である。中国を舞台に、邪悪な格闘技の流派「五毒門」の隠された財宝をめぐって互いに殺し合う5人の弟子たちを描いている。主演はチャン・シェン(江生)、スン・チェン(孫建)、クオ・チャオ(郭追)/フィリップ・コク、ロー・マン(羅莽)、ウェイ・パイ(韋白)、ルー・フェン(鹿峰)。ロー・マンとウェイ・パイは香港の俳優で、それ以外の4人は台湾出身の俳優である。101分。

プロットの概要

格闘技の流派「五毒門」は他の流派から邪道として忌み嫌われていた。一門の師匠は病気のために死に瀕していた。

師匠には5種類の有毒な生物(ムカデ、ヘビ、サソリ、ヤモリ、ガマ)を模した格闘技を修得した5人の弟子がいた。弟子の中には互いに顔や名前を知らない者もいた。弟子たちは全員、身元を隠して一門の隠された財宝を捜していた。

師匠は6番目の弟子で最後の門弟のヤン・ドー(チャン・シェン)に、行いの正しい兄弟子一人と組んで他の4人を始末しろと命じる。

解説

本作の「五毒」は、中国の民間伝承に登場する5つの有毒な生物に由来している。

『五毒拳』はカルト映画として知られている作品である。アメリカの雑誌『エンターテインメント・ウィークリー』は2003年に本作を「Top 50 Cult Films」の11位にランク付けしている。

本作は、漫画のように奇抜で非現実的な設定、ダークな世界観、ミステリー的な謎解きの要素(サソリの正体は映画の結末部で判明する)、ワイヤーを用いたダイナミックでアクロバティックなアクション、様式化された舞踏のような殺陣、残酷な暴力描写が特徴である。

クエンティン・タランティーノの『キル・ビル Vol.1』(2003年)と『キル・ビル Vol.2』(2004年)に登場する暗殺集団DiVAS(毒ヘビ暗殺団)は『五毒拳』から着想を得ている。

日本の特撮TVシリーズ『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007–2008年)に登場する悪役キャラクターの「五毒拳」(米国ローカライズ版『パワーレンジャー・ジャングルフューリー』(2008年)では「Five Fingers of Poison」と呼ばれている)は本作を基にしている。

Five Venoms (1978) DVD Trailer 五毒

あらすじ(ネタバレ注意)

格闘技の流派「五毒門」は他の流派から邪道として忌み嫌われていた。一門の師匠は病気のために死に瀕していた。

師匠には5種類の有毒な生物(ムカデ、ヘビ、サソリ、ヤモリ、ガマ)を模した格闘技を修得した5人の弟子がいた。

1番弟子のチャン・シアオティエン(ルー・フェン)、別名「百足千手」はムカデ拳を修得していた。手数が多く素早い攻撃をする。

2番弟子のチー・トン(ウェイ・パイ)、別名「霊蛇」はヘビ拳を修得していた。敏捷さが特徴で、右手をヘビの頭、左手をヘビの尻尾のように動かす。

3番弟子のティン・ジエ(スン・チェン)はサソリ拳を修得していた。手をサソリのハサミのように、脚をサソリの尻尾のように動かす。手裏剣も使う。

4番弟子のプー・ティエンシア(クオ・チャオ/フィリップ・コク)はヤモリ拳を修得していた。身軽さが特徴で、垂直の壁の上で歩いたり立ったりできる。

5番弟子のリアン・ション(ロー・マン)はガマ拳を修得していた。気功武術の使い手で、体表を鉄のように硬くすることができる。

弟子たちは全員、身元を隠して一門の隠された財宝を捜していた。弟子の中には互いに顔や名前を知らない者もいた。

師匠には入門3年目のもう一人の門弟、ヤン・ドー(チャン・シェン)がいた。

師匠は6番目の弟子にして最後の門弟であるヤンに、行いの正しい兄弟子一人と組んで他の4人を始末しろと命じる。

師匠はヤンに、一門の財宝を引退した同輩に預けているのでまずその同輩を捜せと言う。

ヤンは浮浪者を装って町で師匠の同輩の手がかりを探す。

ヤモリはホー・ユエンシンと名乗り、上司の警吏長のマー・トゥンの下で警吏として働いていた。ホーはガマと協力して財宝の持ち主を捜していた。ガマはリー・ハオと名乗り、他の3人の弟子を捜していた。一方、ムカデはヘビと組んでいた。ヘビはホン・ウェントンという名の資産家の男として知られていた。ムカデはタン・シャンクイと名乗り、ホンの家に出入りしていた。

タンとホンは簿記官のユエンが財宝の持ち主であることを知り、ユエン家を襲撃してユエンから財宝のありかを聞き出そうとするが、ユエンは口を割らない。タンとホンはユエン家の一家11人を皆殺しにする。その後、ワン・ファという名の青年がタンがユエンの家から出てくるのを目撃する。

サソリの覆面を付けた男がユエンの家に侵入し、ロウソクの中に隠された地図を発見して持ち帰る。

ホーは財宝の持ち主であるユエンがムカデとヘビに殺されたことに気付く。

ホーはタンを逮捕するためにリーを連れてホンの家を訪れる。ホンの家から出てきたタンは、リーと戦った後に逮捕される。

法廷でタンの裁判が開かれ、ワン・ファが殺人現場でタンを見たと証言する。ホーはタンに共犯者が誰かを吐かせようとするが、ワン判事は裁判を閉廷する。ワンはホン(ヘビ)とひそかに通じていた。

サソリの覆面を付けた男がホンの家に現れ、リー(ガマ)の暗殺についてホンと相談する。

ホンとワンは共謀してホーの不在中に警吏のリンを買収し、リーを犯人に仕立て上げる。リンは目撃者のワン・ファに偽証をさせる。リーはマーとリンによって容疑者として拘留される。

法廷でリーの裁判が開かれる。無実を主張するリーとホン(ヘビ)の間で戦いが始まる。何者かがリーの急所の耳の後ろに手裏剣を投げる。ホンはリーの急所を更に攻撃してリーを弱らせる。

リーは「鉄の処女」に似た拷問具と鉄の焼きごてを使った拷問にかけられて気絶する。ワンはリーに死刑を宣告し、タン(ムカデ)を無罪放免する。

タンとホンは口封じのためにワン・ファを殺害する。

リンは獄中でリーを窒息死させ、首吊り自殺を偽装する。その後、リンはタンとホンによって殺害される。

ホー(ヤモリ)が町に帰ってくる。マーはホーに、リーが自殺し、ワン・ファとリンが殺されたと伝える。

ヤン・ドーはホーがヤモリであり、行いの正しい人物であることを悟る。ヤンはホーに自分が五毒門の弟弟子であることを明かし、ホーに師匠の指令を伝える。

ホーはヤンと協力してムカデ、ヘビ、サソリを倒す両面作戦を練る。

ホーとヤンはホンの家にやって来る。黒い服を着たマーが現れ、ホーに加勢すると言う。

ホーとヤンはタン(ムカデ)、ホン(ヘビ)と戦う。

マーは自分がサソリであることを明かし、手裏剣を投げてホンを倒す。

サソリの言いなりになって殺人と悪事を犯すことに嫌気が差していたホンはホー側に寝返り、最後の力を振り絞ってサソリを攻撃する。

ホーとヤン、マー(サソリ)とタン(ムカデ)の間で戦いが始まる。