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美しき冒険旅行(1971年)

概説

『美しき冒険旅行(Walkabout)』は、ニコラス・ローグ監督の1971年の冒険ドラマ/サバイバル映画である。オーストラリアを舞台に、アウトバックの荒野に取り残され、アボリジニの少年に助けられながら生き延びようとする2人の都会育ちの学童(10代の少女とその弟)を描いている。 

監督・撮影はニコラス・ローグ。脚本はエドワード・ボンド。脚本はジェームズ・ヴァンス・マーシャルの同名の小説(1959年)の大枠を基にしている。

主演はジェニー・アガター、リュシアン・ジョン、デイヴィッド・ガルピリル。音楽はジョン・バリー。

オーストラリア、イギリス、アメリカ合衆国の共同制作。100分。

あらすじ

映画はオーストラリアのシドニーの高層アパートで暮らすイギリス人の4人家族の日常の場面から始まる。父は地質学者で、妻、14歳の娘(ジェニー・アガター)、6歳の息子(リュシアン・ジョン)と暮らしていた。

ある日、父はピクニックを装って学校の制服を着たままの2人の子供を車に乗せてアウトバックに連れて行く。父は子供たちに向けて銃を撃ち始める。少女は弟を連れて逃げる。父は車に火を放ち、銃で自殺する。少女と弟は砂漠に取り残されてしまう。

少女と弟はわずかな食糧と電池式のトランジスタラジオを持って砂漠を何日もさまよう。

姉と弟はゴウシュウビャクダンの木が生えている泥水のオアシスを発見する。2人はそこで水を浴び、木になった実を食べる。

翌朝、2人はオアシスの水が干上がっていて実がインコに食べられていることに気付く。

2人は食糧と水を失って途方に暮れる。その時、「ウォーカバウト」を行っている10代のアボリジニの少年(デイヴィッド・ガルピリル)が2人の前に現れる。

少年が2人を水場に連れて行き、自分が狩って調理した野生動物の肉を2人に分け与えたため、2人は少年に命を救われる。少女と弟は少年とともに旅を始める。

姉弟と少年はお互いに相手の言葉がわからなかったが、姉弟は少年と親しくなる。

草原地帯を抜けた少年と姉弟は農場の跡地を発見する。彼らはそこの家屋で家族のように一緒に暮らし始める。

少年は少女を愛するようになる。ある晩、少年は少女を妻にするために少女に向けて求愛のダンスを夜通し踊り続けるが、少女は少年を拒絶する。

少女と少年の間には越えがたい文化の壁があり、お互いに理解し合うのは困難だった。更に、子供から大人への過渡期で性の意識に目覚めた彼らは幼少期の純真さを失いつつあった。

少女は弟を連れて家に帰るため、少年と別れることを決意する。

解説

本作のタイトルは、思春期の少年が6か月の間、荒野で一人で生活するという、「ウォーカバウト(Walkabout)」と呼ばれるオーストラリアのアボリジニ社会の通過儀礼に由来している。

『美しき冒険旅行』は、シドニー、アリススプリングス周辺の赤い砂漠、ノーザンテリトリー、南オーストラリアのフリンダース山脈を含むオーストラリアの各地でロケーション撮影された。

アウトバックの大自然の風景と詩的な映像美が本作の見どころである。

トカゲ、ヘビ、昆虫、サソリ、ハリモグラ、鳥類、コアラ、カンガルーなどのアウトバックの生物を撮影したショットを数多く含んでいるのが特徴である。

カンガルーの食肉解体やウジ虫がうようよと群がっている動物の死骸などのリアルで生々しいショットも含まれている。

子役として活動していた当時16–17歳のイギリスの女優、ジェニー・アガターが少女役を、ニコラス・ローグの息子のリュック・ローグがリュシアン・ジョン名義で弟役を、ノーザンテリトリーのアーネム・ランドのヨルング族の一人でダンサーとして知られていたオーストラリア先住民のデイヴィッド・ガルピリルが少年役を、それぞれ演じている。

映画はイギリスの詩人、アルフレッド・エドワード・ハウスマンの『シロップシャーの若者(A Shropshire Lad)』(1896年)のXL(40)番の詩「わたしの心に、殺す風が(Into my heart on air that kills)」の引用と、エンドクレジットの後で画面に表示されるフランス語の成句「rien ne va plus(これ以上何も起こらない)」で終わる。

『美しき冒険旅行』はアウトバックに迷い込んだ子供たちの冒険物語だが、文明社会における無垢の喪失についての寓話として解釈することも可能である。少女が全裸で池で泳ぐ場面はそのような失われた無垢を象徴的に表している。

本作におけるアウトバックはヘブライ語聖書(旧約聖書)の『創世記』に登場する「エデンの園」を連想させるが、それは地上の楽園ではなく、むき出しの自然の中で生物が生き延びるために他の生物を殺して食べる、過酷な環境として描かれている。

本作は裸のシーンがあるためにアメリカ合衆国ではMPAA(アメリカ映画協会)によってR指定とされたが、その後、不服申し立てに基づいてGP(PG)指定に引き下げられた。

2005年に英国映画協会(BFI)は「14歳までに見ておきたい50の映画」のリストに本作を含めた。

Walkabout (1971) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]