言語切替

ラストキング・オブ・スコットランド(2006年)

概説

『ラストキング・オブ・スコットランド(The Last King of Scotland)』は、ケヴィン・マクドナルド監督の2006年の映画である。イギリスの作家ジャイルズ・フォーデンの同名の小説(1998年)の大筋を原作として映画化した作品である。

1970年代のウガンダを舞台に、イディ・アミンが政権を奪取してから独裁者になるまでの経緯を架空のスコットランド人の医師の視点から描いている。

脚本はピーター・モーガンとジェレミー・ブルック。 イギリスとドイツの共同制作。言語は英語とスワヒリ語。121分。

プロットの概要

スコットランドで医学部を卒業したニコラス・ギャリガン(ジェームズ・マカヴォイ)は、軍将校のイディ・アミン(フォレスト・ウィテカー)が1971年の軍事クーデターによって権力を掌握し、新大統領となった直後のウガンダで医師として働き始める。

アミンのカリスマ的な魅力に惹きつけられたギャリガンはアミンの主治医になる。

反政府ゲリラに襲撃されたアミンは、政敵を一掃するためにウガンダ人の大量虐殺を行う。ギャリガンはアミンの支配から逃れるために命がけの闘いを余儀なくされる。

解説

『ラストキング・オブ・スコットランド』は、1971年のウガンダのクーデター、アミンによる独裁と大量虐殺、1972年のウガンダからのアジア人の追放、1976年のエンテベ空港奇襲作戦などの史実を基にした歴史ドラマ/政治スリラー映画である。本作はこれらの史実に虚構を織り混ぜて、スコットランド人の医師の生き残りを懸けた闘いをサスペンスフルなドラマとして描いている。

虐殺や拷問などのショッキングでおぞましい場面を含んでいるので注意が必要である。

イディ・アミンは独立後のアフリカで権力を振るった最も残忍な軍事独裁者の一人である。国際監視団や人権擁護団体は、10万人から50万人のウガンダ人がアミン体制下で殺害されたと推定している。

フォーデンの小説と本作に登場するギャリガン医師は架空の人物だが、ギャリガンの人物設定は、イギリスの兵士・植民地将校のボブ・アストルやスコットランドの医師のウィルソン・カースウェルなどの、アミンと関わりがあった実在の人物から着想を得ている。

『ラストキング・オブ・スコットランド(スコットランドの最後の王)』というタイトルは、アミンがイギリスの女王エリザベス2世に宛てた文書の中で自分をそう呼んだという史実に由来している。アミンはイギリスの支配から独立するためのスコットランドとウガンダの闘いに共通点を見いだしていた。

フォーデンは自身の小説をウィリアム・シェイクスピアの悲劇『マクベス』(1603–1607年頃)の翻案であると述べている。『マクベス』では、マクベスは王のダンカンを殺害してスコットランド王となるが、疑心暗鬼に陥り、残忍な暴君となる。『ラストキング・オブ・スコットランド』では、アミンはまさにマクベスのような人物として描かれている。

本作はウガンダとスコットランドでロケーション撮影された。

多面性を持った人物としてのアミン役を見事に演じたフォレスト・ウィテカーの演技が本作の最大の見どころである。ウィテカーはアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、全米映画俳優組合賞、英国アカデミー賞で主演男優賞を受賞した。

ラストキング・オブ・スコットランド 予告編 -The Last King Of Scotland-

あらすじ(ネタバレ注意)

1970年、エディンバラ大学の医学部を卒業したニコラス・ギャリガン(ジェームズ・マカヴォイ)は、冒険心と父親への反抗からウガンダで働くことを決意する。

ギャリガンは、ウガンダのムガンボ村でデイヴィッド・メリット医師が妻のサラと経営している診療所で医師として働き始める。

1971年、イディ・アミンは軍事クーデターによってミルトン・オボテ大統領の政権を打倒し、新大統領となる。

村で演説するアミンを見たギャリガンはアミンのカリスマ的な魅力に惹きつけられる。

ギャリガンはアミンの手の捻挫を治療したことがきっかけでアミンと知り合う。イギリス人に抵抗したスコットランドの人民に共感を覚えていたアミンはギャリガンを気に入る。アミンはギャリガンを主治医として雇い、ウガンダの医療制度の近代化のためにウガンダの首都カンパラの病院で勤務させる。

ギャリガンはアミンと親しい関係になり、アミンはギャリガンを側近の一人として重用する。

ギャリガンはアミンの三番目の妻ケイの息子マッケンジーのてんかんの発作を治療する。アミンはマッケンジーを治療してくれたお礼としてギャリガンにベンツを贈る。

アミンはギャリガンの運転で空港に向かう途中でオボテ支持派の反政府ゲリラに襲撃され、九死に一生を得る。

アミンは誰かが自分を裏切ったのではないかと疑う。アミンは反逆者たちに包囲されていると思い込み、誰も信じられなくなる。アミンは自分の警護をマサンガ大尉に一任する。

ギャリガンはアミンに、保健大臣のジョナ・ワスワがバーで白人の男と話しているのを見たと報告する。

アミン政権の批判者たちが相次いで行方不明になり、ワスワも姿を消す。

ギャリガンはスコットランドに帰国するためにアミンに辞職を申し出るが、アミンに慰留される。

ケイはギャリガンを誘惑し、ギャリガンはケイと性関係を持ってしまう。ケイはギャリガンにここから逃げろと言う。

アミンは、ギャリガンを逃がさないためにギャリガンが持っていたイギリスのパスポートをウガンダのパスポートとすり替える。

ギャリガンはイギリスの外交官のストーンに助けを求める。ストーンはギャリガンに、アミンが政敵を一掃するためにウガンダ人の大量虐殺を行っていることを教える。アミンはウガンダ軍に所属していた数千人のアチョリ族とランギ族の兵士を虐殺し、保健大臣のワスワを含む一部の閣僚たちの粛清も行っていた。

ストーンはギャリガンに、主治医としての立場を利用してアミンを暗殺しろと言う。

アミンはウガンダ国内のすべてのアジア系住民を国外に追放する。

ケイはギャリガンに、ギャリガンの子を妊娠したことを告げる。ギャリガンはひそかにケイに中絶手術を受けさせようとするが、アミンはケイが自分を裏切って不貞を働いたことを知る。アミンは部下に命じてケイの四肢を切断させ、脚を上半身に、腕を下半身に縫いつけて惨殺させる。

ギャリガンはアミンを暗殺するためにアミンに頭痛薬と称して毒薬を渡す。

エールフランス139便が親パレスチナのテロリストによってハイジャックされ、ウガンダのエンテベ空港に着陸する。アミンはギャリガンを連れて現場に急行する。

マサンガはギャリガンがアミンを暗殺しようとしたことに気付く。ギャリガンはアミンの部下たちによって空港の一室に監禁され、激しい暴行を受ける。

アミンはギャリガンがケイと関係を持ったことに気付いていた。アミンは部下に命じてギャリガンの胸に食肉の搬送用フックを突き刺して吊るさせる。

アミンはイスラエル人以外の人質を解放するための飛行機を手配する。

アミンの前の主治医のジュンジュ医師が、アミンの手下たちがいない間にギャリガンに応急処置を施し、ギャリガンを解放する。ジュンジュはギャリガンに、アミンの実像を世界に知らせてくれと頼む。

ギャリガンは飛行機でパリに向かう人質たちの群衆の中に紛れてウガンダから脱出する。ジュンジュはマサンガに銃殺される。