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天が許し給うすべて(1955年)

概説

『天が許し給うすべて(天はすべて許し給う)(All That Heaven Allows)』は、未亡人と青年の困難な恋愛を描いた1955年のアメリカ合衆国の恋愛ドラマ映画である。監督はダグラス・サーク。89分。

あらすじ

裕福な中年の未亡人、キャリー・スコット(ジェーン・ワイマン)は、ニューイングランド郊外のストニンガムで暮らしていた。キャリーには二人の大学生の子供(息子と娘)がいたが、子供たちは週末しか家に帰ってこない。会員制の社交クラブでは男たちがキャリーを口説こうとするが、キャリーは再婚をする気にならない。

そんなある日、キャリーは、苗木の育苗圃の経営者で、父親からスコット家の庭師の仕事を引き継いで働いていた青年、ロン・カービー(ロック・ハドソン)と親しくなる。

ロンはヘンリー・デイヴィッド・ソローの『ウォールデン 森の生活』(1854年)に影響を受けた自然主義者で、富や地位とは無縁の素朴な生活を楽しんでいた。

ロンは庭師の仕事をやめて植物の栽培に注力し始めるが、キャリーとロンはお互いに惹かれ合ってゆく。

ロンはキャリーに求婚し、キャリーはロンとの結婚を決意するが、キャリーの周囲の保守的で偏狭な上流階級の人々は、階級が違う二人の結婚に対して否定的な反応を示し、キャリーに対して悪意のある噂を広める。

キャリーの子供たちも結婚に猛反対したため、キャリーはロンと別れる。しかしキャリーは、世間体を気にして自分の意志を貫かなかったことを後悔し、ロンと再会しようとする。その頃、ロンが崖から落下して重傷を負ってしまう。

解説

テクニカラーによる人工的な色彩美が特徴の甘美なメロドラマ。1950年代にダグラス・サークがユニバーサル映画社で監督した傑作群の一つである。

ダグラス・サーク監督の『心のともしび』(1954年)で初共演したジェーン・ワイマンとロック・ハドソンが、本作で再び共演している。

『天が許し給うすべて』とその他のサーク作品へのオマージュとして、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーは『不安は魂を食いつくす』(1974年)を監督し、トッド・ヘインズは『エデンより彼方に』(2002年)を監督した。ファスビンダーの『不安は魂を食いつくす』は、『天が許し給うすべて』のリメイクのような映画である。

Jane Wyman in All That Heaven Allows