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乙女の祈り(1994年)

概説

『乙女の祈り』(英語原題: Heavenly Creatures)は、ピーター・ジャクソン監督の1994年のニュージーランドの心理ドラマ映画である。

ニュージーランドの南島最大の都市、クライストチャーチで1954年に実際に起こったパーカー=ヒューム殺人事件を基にしている。

クライストチャーチを舞台に、空想の世界を共有することによって強い絆で結ばれ、殺人を犯すに至る二人の十代の女子生徒を描いている。

脚本はフラン・ウォルシュとピーター・ジャクソン。

製作はジム・ブースとピーター・ジャクソン。

出演はケイト・ウィンスレット、メラニー・リンスキー、サラ・パース、ダイアナ・ケント、クライヴ・メリソン、サイモン・オコナー。

撮影はアラン・ボリンジャー。

音楽はピーター・ダゼント。

製作会社はウィングナット・フィルムズ、フォンタナ・プロダクションズ、ニュージーランド・フィルム・コミッション。

配給はミラマックス・フィルムズ。

99分(ディレクターズ・カット版は109分)。

パーカー=ヒューム殺人事件(1954年)について

ポウリーン・イヴォンヌ・パーカーは1938年生まれのニュージーランドの労働者階級の少女だった。

ジュリエット・ヒュームは1938年にロンドンで生まれ、1948年に両親とともにニュージーランドに移住した。ヒュームはクライストチャーチのカンタベリー大学の学長に就任した物理学者のヘンリー・ヒュームの娘だった。

パーカーとヒュームは1950年代前半にクライストチャーチ・ガールズ・ハイスクールに通っていた。

子供の頃に、パーカーは骨髄炎を、ヒュームは結核を、それぞれ患っていた。

パーカーとヒュームは「第四の世界」と呼ばれる、架空の王国「ボロヴニア」に関する空想の世界を創造して共有し、偏執的な友人関係を築いていた。

パーカーとヒュームは第四の世界を題材にした小説を書いていた。

パーカーは1953年から1954年にかけて、ヒュームとの友人関係を日記に記録していた。

ヒュームの両親は1954年に離婚した。大学の学長の職を辞したヒュームの父はイギリスに帰国することにしたが、ヒュームは親戚が暮らしている南アフリカに送られることになった。

ヒュームはパーカーと一緒に南アフリカに行ってからハリウッドかニューヨークに向かい、そこで自分たちの小説を出版して映画の仕事をするという計画を立てる。

パーカーは、自分の母親は自分がヒュームと一緒に行くことを許さないだろうと考える。

パーカーとヒュームは、彼らの計画に対する障害を取り除くためにパーカーの母親を殺害する計画を立てる。

1954年6月22日、パーカーとヒュームはヴィクトリア・パークでパーカーの母親をストッキングで包んだレンガで殴打して撲殺した。

パーカーとヒュームはパーカーの母親が倒れて頭を打ったと言って事故死に見せかけようとしたが、2人とも殺人容疑で逮捕された。

1954年8月、パーカーとヒュームは殺人罪で有罪を宣告された。

パーカー(16歳)とヒューム(15歳)は死刑に処されるには若すぎたため、それぞれ別の刑務所に送られて無期懲役の刑に処された。

ヒュームは1959年11月に釈放された。パーカーもその2週間後に釈放されたが、1965年までニュージーランドで仮釈放の状態だった。

ヒュームは1970年代末からスコットランドでアン・ペリーという名前で作家として活動を始め、歴史推理小説家として成功を収めた。

ペリーがヒュームだったことはあまり知られていなかったが、1994年に映画『乙女の祈り』が公開された後にペリーの身元がジャーナリストによって明らかにされた。

解説

映画『乙女の祈り』は、1952年の出会いから1954年の殺人に至るまでの期間のパーカーとヒュームの特異な友人関係に焦点を当てている。

本作におけるパーカーの画面外の語りはすべてポウリーン・パーカーの日記からの引用である。

本作は1993年にクライストチャーチでロケーション撮影された。

本作はパーカーとヒュームの精神世界を内側から描いたアプローチが特徴である。

ジュリエット・ヒューム役を演じたケイト・ウィンスレットとポウリーン・パーカー役を演じたメラニー・リンスキーの演技と、視覚効果とデジタル技術を用いて作られた空想の世界の幻想的なショットが本作の見どころである。

パーカーの日記ではパーカーがヒュームと性的な関係を持ったことがほのめかされており、本作には二人の性的な関係を思わせる場面が存在するが、アン・ペリー(ヒューム)はパーカーとの間に性的な関係はなかったと主張した。ペリーは2006年に、自分たちはレズビアンではなかったと述べている。

アメリカ合衆国のテノール歌手・俳優のマリオ・ランツァが歌った歌曲(ルイージ・デンツァ作曲の「フニクリ・フニクラ」を含む)とジャコモ・プッチーニのオペラ(『ラ・ボエーム』、『トスカ』、『蝶々夫人』)が本作で使用されている。

本作にはパーカーとヒュームが映画館でキャロル・リードの『第三の男』(1949年)を観た後に空想の中でハリー・ライム(映画の中でオーソン・ウェルズが演じた人物)に追いかけられる場面がある。

本作は1994年に第51回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。

本作は1995年に第67回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされた。

ケイト・ウィンスレットは1996年に本作で第1回エンパイア賞の最優秀英国女優賞を受賞した。

Heavenly Creatures (1994) Official Trailer – Kate Winslet, Peter Jackson Horror Movie HD