概説
『パピヨン(Papillon)』は、1930年代初頭に冤罪によってフランス領ギアナの流刑地に送られ、仲間の囚人たちとともに脱獄を試みる男が主人公の1973年の脱獄アクション/冒険ドラマ映画である。脚本はフランスの小説家で元囚人のアンリ・シャリエールの同名の半自伝的な小説(1969年)を基にしている。アメリカ合衆国とフランスの共同制作。主演はスティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマン。監督はフランクリン・J・シャフナー。150分。
あらすじ
フランスの金庫破りのアンリ・シャリエール(スティーブ・マックイーン)は、胸に蝶の刺青をしていたために「パピヨン」(「蝶」を意味するフランス語)という愛称で呼ばれていた。パピヨンは無実の罪である殺人罪によって終身刑を宣告され、他の囚人たちとともにフランス領ギアナの流刑地に船で移送される。
パピヨンは船上で囚人仲間のルイ・ドガ(ダスティン・ホフマン)と知り合う。ドガは国防債券偽造の罪で逮捕された悪名高い偽造犯だった。パピヨンとドガは、パピヨンが用心棒としてドガを守る代わりに、ドガはパピヨンの脱獄計画に資金を提供するという取引を行う。
パピヨンとドガはサン=ローラン=デュ=マロニ刑務所に収容される。中庭には、脱獄を繰り返した者を処刑するためのギロチン台が置かれている。
パピヨンとドガはジャングルの沼地での強制労働を課せられる。ドガは自分もパピヨンと一緒に脱獄すると言う。
パピヨンはボートの運転ができる囚人仲間のクルジオ(ウッドロー・パーフリー)を脱獄のメンバーに加える。
パピヨンとドガは、囚人たちが採集した青いメネラウスモルフォを買いに来る貿易商に金を渡して脱獄用のボートを用意させる。
ジャングルでの労働中にドガが看守に暴行を受け、パピヨンはドガを庇って看守を殴り逃走する。パピヨンは貿易商の密告によって看守に捕らえられ、2年間の独房監禁を科せられる。
ドガは1日に1度、独房のパピヨンにひそかに椰子の実を差し入れるが、椰子の実が看守に見つかってしまう。刑務所長のバロット(ウィリアム・スミザーズ)は、誰がやったのかとパピヨンを問い詰めるが、パピヨンは頑として口を割らない。バロットはパピヨンの食事の量を半分に減らし、パピヨンに明かりがない暗闇の独房で半年間生活させる。
パピヨンは正気を失いそうになり、餓死寸前の状態になるが、昆虫を食べて生き延びる。
2年間の独房監禁生活を終えて解放されたパピヨンは、刑務所内の診療所に送られる。
パピヨンとその仲間たちは、囚人の医師にボートの確保を依頼する。医師は、刑務所の外でパスカルという名の男がボートを引き渡す、と言う。
同性愛者の囚人のアンドレ・マチュレット(ロバート・デマン)が脱獄計画のメンバーに加わる。
パピヨン、ドガ、マチュレットは刑務所から脱出するが、クルジオは看守に見つかり、脱出に失敗する。ドガは左足を骨折する。
3人はジャングルでパスカルに会い、パスカルは彼らをボートまで案内するが、パスカルが去った後に3人はボートが壊れていて使い物にならないことに気付く。
その時、顔に刺青がある男が銃を持って現れ、3人を待ち伏せしていた賞金稼ぎたちを始末したと言う。その男は3人に、いかだで海を渡ってハンセン病患者たちが住むピジョン島に行けばボートが買える、と教える。
彼らはいかだで島に渡る。男は3人をハンセン病療養所に案内し、3人は密輸業者からボートを入手する。
3人はボートで海を渡り、ホンジュラスに上陸するが、海岸で兵士の一団に発見される。
パピヨンとマチュレットは、歩けないドガを置き去りにして別々に逃走する。
軍は先住民たちに、逃亡者を生死にかかわらず捕らえろと命じる。
ジャングルに逃げ込んだパピヨンは、先住民が放った吹き矢に撃たれて川に転落する。
なんとか生き延びたパピヨンは、先住民たちが住む海辺の集落で暮らし始める。
ある朝、パピヨンが目覚めると先住民たちがいなくなっており、後には真珠が入った小さな袋が残されていた。
パピヨンは乗り合いバスに乗って町に行く。パピヨンは女子修道院に真珠を寄付し、修道院長にしばらくの間修道院に住まわせてほしいと依頼するが、修道院長はパピヨンを当局に引き渡す。
パピヨンはフランス領ギアナに連れ戻され、5年間の独房監禁を科せられる。
5年後、独房から解放されたパピヨンは白髪になっていた。パピヨンは中庭でマチュレットが担架で運ばれてゆくのを見る。マチュレットは死に、海に水葬される。
パピヨンは離島の悪魔島に島流しになり、そこでドガと再会する。
パピヨンは高い崖から小さな入江を観察し、人間を近くの陸地まで運ぶのに十分なほど波が強いことを発見する。
島から脱出するため、パピヨンとドガは椰子の実を詰め込んだ浮き袋を2つ作る。
2人が浮き袋を持って崖に立った時、ドガは脱出を諦め、パピヨンに行かないでくれと懇願する。パピヨンはドガを抱擁し、海に浮き袋を投げ入れ、崖から飛び降りる。
解説
『パピヨン』は、自由を求めて、不屈の精神とともにフランスの植民地の非人道的な監獄制度に対して戦いを挑み続ける男を描いた脱獄映画の古典である。
ジェリー・ゴールドスミスが作曲・指揮したサウンドトラックはアカデミー賞の作曲賞にノミネートされた。
マイケル・ノアー監督の2017年の映画『パピヨン(Papillon)』は、アンリ・シャリエールの半自伝的な小説と1973年の映画を基にした翻案である。