概説
『現代のためのミサのエレクトロニック・ジャークとモーリス・ベジャールのためのミュジック・コンクレート(Les Jerks Électroniques De La Messe Pour Le Temps Présent Et Musiques Concrètes Pour Maurice Béjart)』は、ミュジック・コンクレートの開拓者として知られるフランスの作曲家、ピエール・アンリ(Pierre Henry)の既発表曲を収録したコンピレーション・アルバムである。
解説
本コンピレーションの収録曲はすべてフランスの振付家、モーリス・ベジャール(Maurice Béjart)のバレエのために作曲されたものである。
本コンピレーションは1968年にフィリップスからLPとして発売された。
フィリップスは1997年に本アルバムの最初のCDを発売した。
『現代のためのミサ(Messe Pour le Temps Présent)』(1967年)はフランスの作編曲家のミシェル・コロンビエ(Michel Colombier)との共同制作である。
バレエ『現代のためのミサ』は1967年にアヴィニョン演劇祭で20世紀バレエ団によって初演された。
この楽曲は電子音響音楽と「ジャーク」(jerk)と呼ばれるロック風のダンス・ミュージックを融合させることによって制作された。アンリが金属音、電子音、チューブラーベルとモーグシンセのサウンドを素材として編集加工することによって電子音響のパートを制作し、コロンビエが器楽のパートを担当した。
『現代のためのミサ』は、電子音楽の分野でサンプリングやカットアップのような技法を開拓した画期的な作品である。
本作品は1990年代以降のクラブミュージックとテクノの文脈で再評価された。1997年にFFRRからリリースされたアルバム『メタモルフォーゼ: 現代のためのミサ(Métamorphose – Messe Pour Le Temps Présent)』は、ウィリアム・オービット(William Orbit)、ファットボーイ・スリム(Fatboy Slim)、コールドカット(Coldcut)、ディミトリ・フロム・パリ(Dimitri from Paris)他による本作品のリミックス・ヴァージョンを収録している。
トラック2の「サイケ・ロック(Psyché Rock)」が本作品の中でもっとも有名な曲である。
「サイケ・ロック」はコスタ=ガヴラス監督の映画『Z』(1969年)で使用された。
ファットボーイ・スリムによる「サイケ・ロック」のリミックス・ヴァージョンがマーク・ウォーターズ監督の映画『ミーン・ガールズ』(2004年)で使用された。
本コンピレーションは、『現代のためのミサ』のプロローグを含む完全版を初収録している。
『現代のためのミサ』に加えて、本コンピレーションはアンリによるミュジック・コンクレート3作品、『緑の女王(La Reine Verte)』(1965年)、『旅(Le Voyage)』(1968年)、『扉とため息のためのヴァリエーション(Variations pour Une Porte et Un Soupir)』(1967年)を収録している。
収録曲
現代のためのミサ
- プロローグ – 1:35
- サイケ・ロック – 2:47
- ジェリコ・ジャーク – 2:26
- ティーン・トニック – 2:40
- トゥー・フォーティシュ – 2:44
緑の女王
- 若者、女王、そして昆虫たちの行進 – 8:50
- ロック・エレクトロニック – 3:32
旅
- カップル – 6:55
- ラールセン現象の流動性と運動性 – 9:49
- 穏やかな神々 – 9:26
扉とため息のためのヴァリエーション
- 揺れ – 1:13
- 歌1 – 0:27
- 目覚め – 1:24
- 歌2 – 1:29
- 伸び – 0:58
- 仕種 – 1:39
- はやし文句 – 1:31
- 興奮1 – 2:24
- 運動 – 2:15
- 興奮2 – 2:29