概説
『大酔侠(大醉俠)』は、キン・フー(胡金銓)監督の1966年の香港の武侠映画。舞台は明朝時代の中国。女剣士と飲んだくれの武術家を主人公として、江南地域の総督府と盗賊団の戦いと「青竹派」の後継争いを描いている。ショウ・ブラザーズ製作。91分。
あらすじ
総督の息子のチャン(ワン・チュン)が率いる一行が盗賊の護送中に、「玉面虎」と呼ばれる副首領(チェン・ホンリエ)に率いられた仲間の盗賊たちに襲撃され、チャンが誘拐される。
玉面虎はチャンを人質に取り、総督府にチャンの解放と引き換えに拘留中の首領の釈放を要求する。総督はチャン救出のために、チャンの妹の金燕子=チン・イエンツ(チェン・ペイペイ(鄭佩佩))を差し向ける。
宿屋に泊まった金燕子は盗賊たちに襲撃されるが、巧みな剣術で盗賊たちを撃退し、ファン・ターペイという名の酔っぱらいの物乞い(ユエ・ホア)に助けられて盗賊たちの夜襲から逃れる。
ファン・ターペイは盗賊たちが廣済寺という寺院を根城にしているということを金燕子に仄めかす。金燕子は廣済寺に一人で乗り込む。寺で盗賊たちと戦っていた金燕子は、玉面虎が放った毒矢で射られて負傷するが、ファン・ターペイに救い出されて一命を取り留める。
ファン・ターペイの隠れ家で、金燕子はファン・ターペイが武術の達人であり、青竹派の正当な後継者であることを知る。
師匠を殺害して青竹派を乗っ取った兄弟子のリャオコン(了空)大師(ヤン・チーチン)を探していたファン・ターペイは、リャオコン大師が廣済寺を拠点にして盗賊たちと手を組んでいることを突き止めていた。
ファン・ターペイは、女戦士たちを率いる金燕子と協力し、盗賊団の首領とチャンとの交換を装って盗賊たちに奇襲を仕掛け、チャンを奪還する。その後、ファン・ターペイはリャオコン大師から青竹派を取り戻すためにリャオコン大師と対決する。
解説
『大酔侠』は、1960年代半ば以降の香港の新しい格闘技映画の先駆けとなった作品であり、女主人公やバイオレンス・アクションなどの当時としては革新的な要素を導入している。
本作のストーリーは京劇『酒丐』の翻案である。
本作は、京劇の舞踊のような様式化された優美な殺陣、血なまぐさい暴力描写、ダイナミックなカメラワーク、細かいカット割り、幻想的な映像美などが特徴である。
中盤にファン・ターペイが子供たちと歌うミュージカルのパートがある。