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エルミタージュ幻想(2002年)

概説

『エルミタージュ幻想(Русский ковчег)』(2002年)は、ロシアのエルミタージュ美術館が舞台の実験的な歴史ファンタジー映画である。

ロマノフ王朝の300年の歴史を、過去と現在、現実と幻想を交錯させつつ、一大パノラマとして描いている。

一回で撮影した90分のワンカットを含む驚異の映画である。

ロシアとドイツの合作。監督はアレクサンドル・ソクーロフ。96分。 

解説

1764年にロシア皇帝のエカチェリーナ2世によって創立された国立エルミタージュ美術館は、サンクト・ペテルブルクのネヴァ河河畔に位置する、世界最大の美術館である。

本作は2001年12月23日にエルミタージュ美術館の冬宮殿にて、ソニーの映画撮影用デジタルヴィデオカメラHDW-F900を使用して非圧縮のHDで撮影された。

本作は幽霊のような名前のない画面外の語り手(アレクサンドル・ソクーロフ)の主観視点で撮影されている。語り手はカメラとともに、キュスティーヌ侯爵(19世紀フランスの外交官・紀行作家)をモデルとする人物「ヨーロッパ人」(セルゲイ・ドレイデン)が美術品が展示された館内を彷徨う様子を追いかける。

館内を彷徨う語り手と「ヨーロッパ人」は、舞台劇を鑑賞するエカチェリーナ2世、1829年の外交官アレクサンドル・グリボエードフの殺害についてペルシアの使節団がニコライ1世に謝罪する謁見式、ニコライ2世の家族との晩餐などのさまざまな場面に遭遇する。

最後の絢爛豪華な舞踏会の場面が本作の見どころである。この場面ではワレリー・ゲルギエフがマリインスキー劇場管弦楽団を指揮してミハイル・グリンカ作曲のオペラ『皇帝に捧げた命』(1836年)の「マズルカ」を演奏している。

映画『エルミタ―ジュ幻想』予告編