概説
『フィルハーモニー』は日本のミュージシャンの細野晴臣による6作目のソロアルバムである。
解説
細野はYMO在籍時の1982年に高橋幸宏とともにアルファレコード内で自身のレコード・レーベルであるYEN(¥EN)レーベル(1982–1985年)を設立した。
アルバム『フィルハーモニー』は1982年に東京のLDKスタジオで細野とエンジニアの飯尾芳史によって録音・ミックスされ、同年に立花ハジメのアルバム『H』とともにYENレーベルの第1弾としてLPで発売された。
細野はE-MU社のイミュレーターI(サンプラー)やローランドのMC-4(シーケンサー)、プロフェット5(アナログ・シンセサイザー)、リンドラム(ドラムマシン)を使用して本アルバムの音楽をほぼ一人で制作した。
本作はサンプリングを駆使した実験的なシンセポップのアルバムだが、細野のヴォーカルをフィーチュアしたポップな楽曲3曲、「フニクリ、フニクラ(FUNICULI FUNICULA)」、「L.D.K.(LIVING-DINING-KITCHEN)」、「スポーツマン(SPORTS MEN)」も収録されている。
歌詞は英語(一部日本語)。
本アルバムの初回プレス盤には「夢見る約束」のソノシートが添付されていた。「夢見る約束」は細野がゲルニカ(細野がYENレーベルでプロデュースしていたバンド)の影響下で制作した昭和歌謡風の曲である。
「フニクリ、フニクラ」はルイージ・デンツァ作曲のイタリアの大衆歌謡(カンツォーネ・ナポレターナ)「フニクリ・フニクラ(Funiculì, Funiculà)」(1880年)の日本語詞カヴァー。
「ホタル(LUMINESCENT/HOTARU)」はガムランのゴングの音を基にした曲。
「L.D.K.(LIVING-DINING-KITCHEN)」はスライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly & The Family Stone)風のファンキーなシンセポップ曲。
「お誕生会(BIRTHDAY PARTY)」は息や声、ノイズ、楽器などのサンプリングされた音をループさせて作られた前衛的な曲。
「スポーツマン(SPORTS MEN)」はキャッチーなメロディーのシンセポップ曲。
「エア・コン(AIR-CONDITION)」は気流音のような音を含む環境音楽風の曲。ブライアン・イーノ(Brian Eno)のアンビエント・シリーズからの影響がうかがえる曲である。
2005年に本アルバムのリマスター盤がSMDR GT MusicからCDで発売された。このCDの購入者は「夢見る約束」をインターネット上のストリーミングで聴くことができた。
2019年に砂原良徳によるリマスター盤がGT MusicからSACDハイブリッドとLPで発売された。SACDハイブリッド盤は「夢見る約束」をボーナス・トラックとして収録している。
参加ミュージシャン
- 細野晴臣 – synthesizer, programming, vocals, LinnDrum
- 松武秀樹 – MC-4 computer programming
- 高橋幸宏
- 上野耕路
- 奥村靫正 – トラック2の声
- 坂本龍一 – トラック6のピアノ
- 梅林茂 – トラック6の声
- 南無(ネコ) – トラック7の声
- 日笠雅子(雅水) – トラック7の声
- 鋤田正義 – トラック7の息
- 立花ハジメ – トラック7の声
- 篠崎恵子 – トラック7の声
- FILMS – トラック7のノイズ
- 福澤もろ – トラック7の声
- 加藤和彦 – トラック8の声
収録曲
「フニクリ、フニクラ」を除く全曲の作曲・プロデュースは細野晴臣。
オリジナルLP
- PICNIC ピクニック – 1:52
- FUNICULI FUNICULA フニクリ、フニクラ – 4:31
- LUMINESCENT/HOTARU ホタル – 4:22
- PLATONIC プラトニック – 4:20
- IN LIMBO リンボ – 2:25
- LIVING-DINING-KITCHEN L.D.K. – 3:46
- BIRTHDAY PARTY お誕生会 – 3:51
- SPORTS MEN スポーツマン – 4:02
- PHILHARMONY フィルハーモニー – 3:22
- AIR-CONDITION エア・コン – 4:23
2019年リマスター盤(SACDハイブリッド)ボーナス・トラック
- 夢見る約束 – 4:05