概説
『オープン・ユア・アイズ(Abre los ojos)』は、アレハンドロ・アメナーバル監督の1997年のSFサスペンス/サイコスリラー映画である。スペインのマドリードを舞台に、自動車事故で顔に傷を負い、夢と現実の境界が曖昧な悪夢のような世界に迷い込んだ青年の恐怖の体験を描いている。スペイン、フランス、イタリアの共同制作。117分。
あらすじ
本作では、回想シーン(フラッシュバック)を「現在」の場面と交錯させる、非線形の(非時系列的な)語りによって物語が進展する。
25歳の男、セサル(エドゥアルド・ノリエガ)は殺人罪でマドリードの刑務所に収監されている。刑務所の独房でセサルは曖昧で断片的な過去の記憶を呼び起こし、マスクで顔を隠したまま、精神科医のアントニオ(チェテ・レーラ)に自分の過去を話す。
セサルはマドリードに住むハンサムで裕福なプレイボーイだった。セサルの親友のペラーヨ(フェレ・マルティネス)は女子にもてるセサルをうらやましく思っていた。
セサルは元恋人のヌリア(ナイワ・ニムリ)にしつこくつきまとわれていた。
ペラーヨは恋人のソフィア(ペネロペ・クルス)をセサルの誕生日パーティーに連れていく。セサルはソフィアに一目惚れする。セサルとソフィアは付き合い始める。
ある朝、ソフィアのアパートに泊まったセサルは、ソフィアのアパートの外でセサルを待ち伏せしていたヌリアを発見する。ヌリアはセサルを車に乗せて走り出す。嫉妬に狂ったヌリアは、わざと自動車事故を起こして心中を図る。ヌリアは死ぬ。セサルは一命を取り留めるが、セサルの顔は事故によって傷つき、醜い外見になってしまう。
外科医たちはセサルに、セサルの顔を元に戻すことができないことを告げ、マスクを被って顔を隠すことを勧める。
事故の後にソフィアはセサルに対して距離を置くようになり、セサルは絶望する。
しかし、セサルが酔いつぶれて路上で眠りに落ちた夜を境に状況は一変する。ソフィアは再びセサルを愛するようになる。外科医たちは画期的な新技術を開発し、セサルの顔を手術で元に戻す。
セサルにとって全てがうまくいっているかのように思われたが、セサルは彼の顔が醜いままで元に戻っていないという幻覚に悩まされるようになる。
ある晩、ベッドでソフィアと愛し合った後で、セサルはソフィアがヌリアに変わっているのを発見する。ヌリアは自分がソフィアだと言う。セサルは警察に届け出るが、セサルを除く全ての人々が、彼女がソフィアだと証言する。セサルはソフィアの家でヌリアを枕で窒息死させる。セサルは殺人罪で投獄される。
セサルは刑務所で、人体冷凍保存を専門とするアメリカの会社、「ライフ・エクステンション(Life Extension)」(L.E.)に関する記憶を想起する。自分が陥っている悪夢のような世界の謎を解くために、セサルはアントニオとともに、刑務官たちの監視下でL.E.のマドリード支社を訪れる。
セサルはマドリード支社の屋上でL.E.の社長のデュベルノワ(ジェラール・バレー)と会い、真実を知る。悪夢から目覚めるためにセサルはある決断をする。
解説
『オープン・ユア・アイズ』は、ロマンティックな要素を含むスタイリッシュで娯楽的なサイコスリラー映画である。本作は、人体冷凍保存やバーチャル・リアリティなどのSF的な設定を用いて、記憶に基づく人格としての自己同一性(アイデンティティー)の不確定性や、現実と夢を区別できないことの恐怖といったテーマを扱っている。
『オープン・ユア・アイズ(目を開けて)』というタイトルは、セサルが朝起きる時に使っている目覚まし時計が発する録音された音声メッセージに由来している。
本作はおそらくロベルト・ヴィーネの『カリガリ博士』(1920年)を参照している。「セサル(César)」という名前は『カリガリ博士』の主人公の「チェーザレ(Cesare)」から来ていると思われる。
本作のテーマとSF的な設定は、ウォシャウスキー兄弟が監督した『マトリックス』(1999年)を含む多くの映画に影響を与えている。
本作は1998年の東京国際映画祭でグランプリを受賞した。
キャメロン・クロウ監督、トム・クルーズ主演のアメリカ映画『バニラ・スカイ』(2001年)は本作のリメイクである。ペネロペ・クルスは『バニラ・スカイ』でソフィア役を再び演じている。