概説
『黒い罠(Touch of Evil)』はオーソン・ウェルズ脚本・監督による1958年のアメリカ合衆国のフィルム・ノワールである。
脚本の大筋はウィット・マスターソンの推理小説『Badge of Evil』(1956年)に基づいている。
音楽はヘンリー・マンシーニ。
あらすじ
新婚旅行でメキシコの国境沿いの町にやってきたメキシコの麻薬捜査官、ミゲル・ヴァルガス(チャールストン・ヘストン)と妻のスーザン(ジャネット・リー)は、国境のアメリカ側で車が爆発炎上するのを目撃する。爆殺されたのは地元の建設業界の有力者のルディ・リネカーと連れの女だった。
ヴァルガスはアメリカの警察署長のハンク・クインラン(オーソン・ウェルズ)とともに事件の捜査を開始する。
クインランは若いメキシコ人を容疑者として連行するが、ヴァルガスはクインランが証拠を捏造したことに気づき、クインランを告発しようとする。一方、クインランはヴァルガスの口を封じるためにスーザンの誘拐を企てる。
解説
映画『黒い罠』はアメリカとメキシコの国境地帯を舞台に、警察の腐敗や人種差別などのテーマを扱っている。
ワンショットの長回しや18.5mmの広角レンズによる撮影などの技巧を凝らした芸術的な映像が特徴である。
オープニングのワンショットの長回し(3分20秒)は有名である。
本作は本国アメリカでは興行的に失敗に終わったが、ヨーロッパでは観客の支持を獲得し、1958年のブリュッセル万国博覧会の国際映画祭でアンドレ・バザン、ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーなどの批評家たちによって最高賞に選出された。
現在ではウェルズの最高傑作の一つ、フィルム・ノワールの傑作の一つとして広く認められている。
公開以来、ウェルズの意向に反して再編集された96分のバージョンが上映されていたが、1998年にウェルズが残したメモに基づいて再構成された111分のバージョンが公開された。
マレーネ・ディートリヒがジプシーの占い師のような娼家の主人ターニャを演じている。