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キャンディマン(1992年)

概説

『キャンディマン』(英語原題: Candyman)は1992年のアメリカ合衆国の超自然的なホラー映画である。監督・脚本はバーナード・ローズ。出演はヴァージニア・マドセン、トニー・トッド、ザンダー・バークレー、ケイシー・レモンズ。

脚本は1985年に出版されたクライヴ・バーカーの本『血の本』第5巻に収録の短編小説『禁じられた場所』の翻案である。

シカゴの公共住宅、カブリーニ=グリーンを舞台に、都市伝説の調査中にアフリカ系アメリカ人の芸術家の幽霊であり手にかぎ爪を持つ殺人者の「キャンディマン」に取り付かれた大学院生、ヘレン・ライルの恐怖体験を描いている。

撮影はアンソニー・B・リッチモンド。

音楽はフィリップ・グラス。

製作会社はポリグラム・フィルムド・エンターテインメント、プロパガンダ・フィルムズ。

配給はトライスターピクチャーズ。

ビスタビジョン。101分。

解説

バーカーの短編小説はイギリスのリヴァプールが舞台だが、映画『キャンディマン』はイリノイ州シカゴのニアー・ノース・サイドに実在していたカブリーニ=グリーンの荒廃した公共住宅を舞台にしている。

物語はイリノイ大学シカゴ校の大学院生、ヘレン・ライル(ヴァージニア・マドセン)を中心に展開する。

都市伝説の調査を行っていたヘレンは、キャンディマンと呼ばれる霊に関する噂に興味を引かれる。噂によると、キャンディマンは右手が切り落とされていて血まみれの右腕にかぎ爪が付いており、鏡の前でその名を5回唱えた者を殺すという。

懐疑論者であるヘレンはキャンディマンの実在を信じていなかったが、本物のキャンディマン(トニー・トッド)がヘレンの前に現れ、ヘレンの友人のバーナデット(ケイシー・レモンズ)を殺害する。

自分とキャンディマンが運命的な絆で結ばれていることを知ったヘレンはキャンディマンの呪いを継承し、自らが悪霊と化す。

『キャンディマン』は超自然的なホラー映画とスラッシャー映画の両方の要素を含んでいる映画である。

本作におけるキャンディマンは超自然的な存在だが、スラッシャー映画の悪役のように物理的に人を殺す殺人者でもある。

本作はヘレンとキャンディマンの愛の物語として解釈することも可能である。映画の後半ではヘレンがキャンディマンの恋人の生まれ変わりであることが示唆されている。

キャンディマンがヘレンを抱き締めてキスをする(ハチの大群を口移しで与える)場面は、おぞましくも魅惑的なラブシーンである。

フィリップ・グラスによるスコアは宗教音楽のように荘厳であり、映画の神秘的な雰囲気を盛り上げている。

本作は1991年11月にシカゴでロケーション撮影された。屋内のシーンはロサンゼルスで撮影されている。

本作は1992年のトロント国際映画祭で世界初上映され、同年にアメリカ合衆国で公開された。

本作でヘレン役を演じたヴァージニア・マドセンは1993年の第19回サターン賞で主演女優賞を受賞した。

1995年のビル・コンドン監督の映画『キャンディマン2』は本作の続編である。

1999年のトゥリ・マイヤー監督の映画『キャンディマン3』は1995年の映画の直接の続編である。

2021年のニア・ダコスタ監督の映画『キャンディマン』は1992年の映画の直接の続編である。

あらすじ(ネタバレ注意)

イリノイ大学シカゴ校の記号学専攻の大学院生、ヘレン・ライル(ヴァージニア・マドセン)は同大学で人類学を教えている夫のトレヴァー(ザンダー・バークレー)と暮らしていた。

都市伝説の調査を行っていたヘレンは、キャンディマンと呼ばれる霊に関する噂に興味を引かれる。噂によると、キャンディマンは右手が切り落とされていて血まみれの右腕にかぎ爪が付いており、鏡の前でその名を5回唱えた者を殺すという。

ヘレンはカブリーニ=グリーンの公共住宅でルーシー・ジーンという名の女性がキャンディマンに殺害されたという話を聞く。懐疑論者であるヘレンはキャンディマンの実在を信じていなかったが、ヘレンは友人のバーナデット・ウォルシュ(ケイシー・レモンズ)とともにカブリーニ=グリーンを訪れ、殺害現場を調べる。

カブリーニ=グリーンの団地はギャングに占拠され、犯罪が多発する廃墟と化していた。壁は落書きで埋め尽くされている。

ヘレンはキャンディマンへの供物が残された部屋を発見する。

ヘレンは犠牲者の隣人のアン=マリー・マッコイ(ヴァネッサ・ウィリアムズ)と知り合う。マッコイは乳児の息子のアンソニーを育児中のシングルマザーだった。

ヘレンと夫のトレヴァーはキャンディマン伝説の権威のフィリップ・パーセル教授と夕食をともにする。パーセルはキャンディマン伝説について以下のように語る。

  • この伝説が最初に現れたのは1890年である。
  • キャンディマンは奴隷の息子として生まれたアフリカ系アメリカ人の芸術家だった。
  • キャンディマンは裕福な地主の娘である白人の女性と恋仲になり、女性を妊娠させた。
  • 女性の父親は暴徒を仕向けてキャンディマンにリンチを加えさせた。暴徒はキャンディマンの右手を切り落とし、養蜂場から盗んだハチの巣をキャンディマンに塗りつけた。キャンディマンは寄ってきたハチに刺されて死亡した。
  • キャンディマンの遺体は後にカブリーニ=グリーン住宅が建てられた場所で薪の中で焼かれた。

翌日、再びカブリーニ=グリーンを訪れたヘレンは、ジェイクという名の少年から、1人の少年が公衆トイレでキャンディマンに去勢されて殺害されたという話を聞く。

ヘレンがその公衆トイレを調べていると、キャンディマンを名乗る男にかぎ爪で殴られる。

その男は地元のギャングのリーダーであることが判明し、男は警察に逮捕されるが、本物のキャンディマンが立体駐車場でヘレンの前に現れ、ヘレンに催眠術をかける。ヘレンは意識を失う。

ヘレンはアン=マリーの部屋で血まみれの状態で目を覚ます。アン=マリーの飼い犬が首を刎ねられており、アン=マリーの息子のアンソニーがいなくなっている。ヘレンは警察に逮捕される。

トレヴァーは保釈金を払ってヘレンを刑務所から保釈させる。

ヘレンが家に一人でいる時にキャンディマンが部屋に侵入してヘレンの首を切りつける。ヘレンは血を流して気絶する。バーナデットがヘレンの部屋にやって来る。

意識を取り戻したヘレンは、バーナデットがキャンディマンに殺害されているのを発見する。

ヘレンは罪を着せられ、精神病院に収容される。

ヘレンは病院で精神科医のバーク医師に、キャンディマンを召還して無実を証明すると言う。

ヘレンは鏡の前でキャンディマンの名を5回唱える。キャンディマンが現れ、バークを殺害する。

キャンディマンはヘレンの拘束を解いて姿を消す。ヘレンは病院から脱走する。

自宅に戻ったヘレンは、夫のトレヴァーが大学の教え子の一人のステイシーと暮らしているのを発見する。

ヘレンはアンソニーを救出するためにカブリーニ=グリーンにやって来る。

ヘレンは団地の上層階にある廃墟となった部屋の隠れ家でキャンディマンとアンソニーを見つける。

キャンディマンはヘレンを抱き締めてキスをする。キャンディマンの口からハチの大群が溢れ出し、ヘレンの口から体内に入り込む。

キャンディマンはアンソニーとともに姿を消す。目を覚ましたヘレンはキャンディマンとその恋人が描かれた壁画を発見する。恋人はヘレンにそっくりだった。

ヘレンは団地の前にある瓦礫の山で泣いているアンソニーを発見する。アンソニーを救出するためにヘレンは瓦礫の山に飛び込む。

ヘレンをキャンディマンだと誤認した住民たちは瓦礫の山にガソリンをまいて火をつける。

キャンディマンが現れてヘレンとアンソニーを焼き殺そうとするが、ヘレンはアンソニーを火の中から救い出す。

キャンディマンは炎の中で消滅する。ヘレンは重度の火傷を負って命を落とす。

ヘレンの葬儀が執り行われる。

悲嘆に暮れ、罪悪感に苛まれたトレヴァーは自宅の鏡の前でヘレンの名を5回口にする。ヘレンの霊が現れ、トレヴァーをかぎ爪で引き裂いて殺す。

キャンディマンの隠れ家に白い服を着て髪が燃え上がったヘレンの壁画が現れる。