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裸の島(1960年)

概説

『裸の島』は、離島に住む家族の生活を台詞なしで描いた1960年の日本の実験的な映画である。

監督・脚本は、野心的な作品群で知られる日本のインディペンデント映画の先駆者の新藤兼人。

モノクロ。シネマスコープ。96分。

あらすじ

夫の千太(殿山泰司)と妻のトヨ(乙羽信子)、8歳の息子の太郎と6歳の息子の次郎の4人の家族は、瀬戸内海の小さな島に住んでいた。

電気も水道もないその島には、彼らの他には誰も住んでいなかった。彼らは島の頂上に藁葺き屋根の小屋を建てて住み、段々畑で麦とサツマイモを栽培しながら暮らしていた。

千太とトヨの日課は、隣の島から水を運んでくることだった。彼らは毎日、小船を漕いで隣の島まで行き、手桶に水を汲み、天秤棒で担いで水を島の頂上まで運ぶ。トヨは小船で、隣の島の小学校に通う太郎の送り迎えもしていた。

彼らがなぜ、ギリシャ神話に出てくるシジフォスの労苦のような労働をしながら離島で不便な生活を続けているのかについては何の説明もなく、映画は彼らが小船を漕ぎ、天秤棒を担いで斜面を登り、畑に水をまく様子を克明に描写する。

ある日、太郎が高熱を出す。千太は隣の島に行き、医者を探す。

解説

本作は瀬戸内海の広島県三原市沖の島々でロケーション撮影された。本作で家族が住んでいる島は宿禰島(すくねじま)で、隣の島は佐木島である。宿禰島は当時はほぼ無人の島だった。家族が市街地を訪れる場面は広島県尾道市で撮影された。

殿山泰司と乙羽信子以外の出演者はすべて地元の人々である。

本作の音声は林光作曲の劇伴音楽と声を含む自然音のみで構成されており、話し言葉による台詞はない。劇中で何度も繰り返されるメインテーマ曲が印象的である。

題材と作風はルキノ・ヴィスコンティ監督の『揺れる大地』(1948年)のようなイタリアのネオレアリズモ映画に似ており、ドキュメンタリー風の生活描写を含んでいるが、本作はリアリズムよりも象徴的な表現を重視しており、生き延びるためにこつこつと働く農民の家族の物語を通して、労働と人生という普遍的かつ根源的なテーマを扱った、一種の映像詩として観賞することができる。

本作は1961年のモスクワ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞し、世界60カ国以上の国々で上映された。

日本では2001年に本作のDVDがアスミックから発売された。

米国のクライテリオン・コレクションは2016年に本作の英語字幕版をDVDとBlu-rayで発売した(デジタル配信でも視聴可能)。

The Naked Island (1960) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]