概説
『ウィッカーマン(The Wicker Man)』は、スコットランドの架空の島の異教信仰を題材にした1973年のイギリスの民俗ホラー映画である。監督はロビン・ハーディ。脚本はデイヴィッド・ピナーの小説『儀式(Ritual)』(1967年)から着想を得ている。
あらすじ
スコットランドのウェストハイランド警察の巡査部長、ニール・ハウイー(エドワード・ウッドワード)は、12歳の少女ローワン・モリソン(ジェリー・クーパー)の失踪を捜査するために、スコットランド西岸のヘブリディーズ諸島の孤島サマーアイルにやってくる。ハウイーはローワンの捜索を依頼する匿名の手紙を受け取っていた。
その島は、ヴィクトリア朝の農学者の孫で領主のサマーアイル卿(クリストファー・リー)が統治しており、島民たちはケルトの古代宗教を信仰していた。
敬虔なキリスト教徒であるハウイーは、島民たちが野原でおおっぴらに性交し、子供たちを性的な祭の儀式に参加させ、学校で子供たちに男根崇拝について教えているのを見て衝撃を受ける。
ハウイーはローワンについての聞き込み調査を行うが、島民たちはローワンの存在を否定する。ハウイーは、ローワンが島の宗教儀式の人身御供として殺されたのではないかと疑い始める。
解説
本作は本国イギリスでの公開時はニコラス・ローグ監督の『赤い影』との2本立てで添え物扱いだったが、1980年代以降にカルト・クラシックとしての評価を確立している。
ホラーとミステリー、コメディーの要素を含んでおり、一部がイギリスの伝統的なフォーク・ミュージックを基にした牧歌的な楽曲によるミュージカル風のパートとなっている。
最後のシークエンスで登場する「ウィッカーマン」は、ドルイド(古代ケルトの僧)がいけにえの儀式で使用した編み細工の巨像である。
オリジナル版の尺は120分だったが、1973年の一般公開時は87分の短縮版が上映された。その他に、1979年の復元版(96分)、2001年のディレクターズ・カット版(99分)、2013年のファイナル・カット版(94分)など多数のバージョンがある。