概説
『宇宙戦争(War of the Worlds)』は、H・G・ウェルズの同名の小説(1898年)が原作の2005年のアメリカ合衆国のSFアクション映画である。監督はスティーヴン・スピルバーグ。主演はトム・クルーズ。地球外生命体が地球を侵略し、巨大な戦闘機械で都市を破壊する破局的な状況における、一人の港湾労働者とその家族の物語を描いている。パラマウント・ピクチャーズとドリームワークス・ピクチャーズの共同制作。116分。
あらすじ
レイ・フェリエ(トム・クルーズ)は、ニューヨークのブルックリンの港湾でクレーンのオペレーターとして働きながら、ニュージャージーのベイヨンで一人暮らしをしていた。レイには離婚した妻メリー・アン(ミランダ・オットー)との間に二人の子供、10代の息子のロビー(ジャスティン・チャットウィン)と10歳の娘レイチェル(ダコタ・ファニング)がいた。
レイは子供たちとは疎遠な関係だったが、ある週末、妊娠中のメリー・アンはボストンの両親を訪れるため、二人の子供をレイに預ける。
その後、世界各国で「トライポッド」と呼ばれる巨大な三脚型の戦闘機械が地中から出現し、町を破壊し始める。
レイはバンを盗み、子供たちとともに避難するためにニュージャージー郊外のメリー・アンの家に車で向かう。
その夜、彼らは地下室に避難するが、家は異星人によって破壊される。翌朝、レイとロビーは家の近くにボーイング747が墜落しているのを発見する。
レイは子供たちを車に載せて、ボストンのメリー・アンの両親の家に向かうが、パニック状態の群衆に車を奪われる。
レイたちはハドソン川を渡るフェリー船に乗る。フェリー船はトライポッドによって転覆させられるが、レイたちはなんとか生き延びる。
レイたちはトライポッドと交戦中のアメリカ海兵隊を目撃する。異星人との戦いに参加しようとするロビーは、海兵隊を追って姿を消す。
ハーラン・オグルビー(ティム・ロビンス)という名の男に導かれて、 レイとレイチェルは空き家に避難する。彼らが地下室で身を潜めているときに、異星人の集団が家に侵入してくる。
解説
『宇宙戦争』は、俯瞰的な視点から全体を説明する代わりに一人の市民の限定された視点から状況を描いているのが特徴である。
本作は人類と異星人の戦争そのものではなく、家族を顧みなかった男が極限状態の中で子供たちを守るために父親になってゆく、家族の物語に焦点を当てている。
ジョージ・パル製作、バイロン・ハスキン監督の1953年の映画『宇宙戦争』は米ソの冷戦を背景とする核戦争の脅威を反映していたが、スピルバーグの2005年版は2001年のアメリカ同時多発テロ事件の記憶とテロリズムの恐怖を反映している。
本作はスペクタクル映画としての物足りなさと結末の呆気なさがしばしば批判されるが、批評家筋からは高く評価されている。
フランスの映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』は2000-2009年のベスト映画のリストで本作を第8位としている。
日本の映画監督の黒沢清と青山真治は2000-2009年の映画ベスト10の一つに本作を挙げている。