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近藤譲: 線の音楽(Various Artists, 1974)

概説

『線の音楽』は、1947年東京生まれの日本の現代音楽の作曲家、近藤譲の初アルバムである。近藤自身が「線の音楽」と名付けた独自の実験的な作曲方法論に基づいて1973–1974年に作曲した5作品を収録した作品集である。

解説

本作は、近藤が現代音楽の分野で世界的に知られるようになる前の1974年にALM RECORDS/コジマ録音からLPとして発売された。

収録曲の大半は後に日本の室内楽団アンサンブル・ノマドによって再録音されてCDとしてリリースされているが、本作は近藤が自身の出発点である「線の音楽」の方法論を作品群として初めて提示したという点で重要なアルバムである。

近藤は1979年に本作と同名の音楽理論書も出版している。

本作は2014年にALM RECORDS/コジマ録音により初CD化された。

近藤が書いた本作のライナーノーツによると、「線の音楽」とは一音単位に分節=連接(articulate)された音の列なりを指し、際限のないパルスとしての持続を有する。この概念に基づいて、近藤は音を群ではなく空間化された単音の列なりとして扱う。

「線の音楽」は音に隙間を与え、音楽を音とその影の関係の場に変える。作曲者はその「音の影付け」の手法を「音のメタ音化」と呼んでいる。

メタ音化の手段として、「ORIENT ORIENTATION」(ハープ、多重録音)と「STANDING」(フルート、マリンバ、ピアノ)では楽器間のアタックのずれを、「FALLING」(2本のヴィオラ、コントラバス、電気ピアノ)では持続的に推移する音の運動性における時間のずれを、「CLICK CRACK」(ピアノ)と「PASS」(バンジョー、2本のギター、大正琴、ハープ、ハーモニカ)ではハーモニクス(倍音)を、それぞれ用いている。

ジョン・ケージやモートン・フェルドマン、スティーヴ・ライヒなどを好む方におすすめのアルバムである。

収録曲

収録曲の一覧と演奏者は以下の通り。

  1. CLICK CRACK(1973年): 高橋悠治(ピアノ)
  2. ORIENT ORIENTATION(1973年): 篠﨑史子(ハープ、多重録音)
  3. STANDING(1973年): 小泉浩(フルート)、山口恭範(マリンバ)、高橋アキ(ピアノ)
  4. PASS(1974年): 佐藤紀雄(バンジョー)、志村菊夫(ギター)、曽我傑(ギター)、高橋アキ(大正琴)、篠﨑史子(ハープ)、山口恭範(ハーモニカ)、川合良一(指揮)
  5. FALLING(1973年): 篠﨑功子(ヴィオラ)、篠﨑正嗣(ヴィオラ)、永島義男(コントラバス)、高橋アキ(電気ピアノ)
Jo Kondo – Sen No Ongaku (1974)