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New York Dolls: Too Much Too Soon (1974)

概説

『トゥー・マッチ・トゥー・スーン(Too Much Too Soon)』(邦題: 悪徳のジャングル)は、アメリカ合衆国のロックバンド、ニューヨーク・ドールズ(New York Dolls)の2作目のスタジオ録音アルバムである。

制作の背景

ニューヨーク・ドールズは、ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のダーティーなロックンロールに影響を受け、主に1970年代に活動したハードロック・バンドである。

その両性具有的なファッションはデイヴィッド・ボウイ(David Bowie)などのイギリスのグラムロックのアーティストとの類似性を指摘されることが多かった。

音楽的には後のパンク・ロックやヘヴィメタルに影響を与えた独自のハードロックが特徴で、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)やストゥージズ(The Stooges)などと並ぶプロト・パンクのバンドの一つと捉えることができる。

ニューヨーク・ドールズはジョニー・サンダース(guitar, vocals)、リック・リヴェッツ(guitar)、アーサー・ケイン(bass guitar)、ビリー・ムルシア(drums)、デイヴィッド・ヨハンセン(vocals, harmonica)によって1971年にニューヨーク市で結成された。

1972年にリヴェッツに代わってシルヴェイン・シルヴェイン(guitar, bass, piano, vocals)が加入し、イギリス・ツアー中に死去したムルシアに代わってジェリー・ノーラン(drums)が加入。その後、ドールズはマーキュリー・レコードと契約した。

トッド・ラングレン(Todd Rundgren)がプロデュースしたデビューアルバム『ニューヨーク・ドールズ(New York Dolls)』が1973年にリリースされ、全米ビルボードで最高位116位を記録した。

解説

アルバム『トゥー・マッチ・トゥー・スーン』は1974年にニューヨーク市のA&Rスタジオで録音、同年にマーキュリー・レコードからLPとカセットで発売され、全米ビルボードで最高位167位を記録した。

本作は1987年に日本とアメリカ合衆国で初CD化された。

2010年にボーナス・トラック4曲を含むリマスター版がユニバーサルミュージックジャパンよりSHM-CDとして発売された。

アルバムのタイトルは、アメリカ合衆国の女優、ダイアナ・バリモアの伝記『Too Much, Too Soon』(1957年)に由来している。

アルバムのプロデュースは、ガールズ・グループのシャングリラス(The Shangri-Las)のヒット曲のプロデュースで知られるシャドウ・モートン(Shadow Morton)が手がけた。

ドールズのディスコグラフィーの中では、最初のアルバム『ニューヨーク・ドールズ』が代表作、プロト・パンクの名盤として言及されることが多いが、2作目のアルバム『トゥー・マッチ・トゥー・スーン』も1作目と比べても遜色のない優れたアルバムである。

ドールズの2つのスタジオ録音アルバムはあまり売れなかったが、批評家からは高く評価され、カルト的な支持を獲得している。

『トゥー・マッチ・トゥー・スーン』はポップ志向のハードロック、グラムパンクのアルバムである。ヨハンセンの演劇的なヴォーカル・パフォーマンスと、女声のバックヴォーカル、管楽器、音響効果を含むモートンの洗練されたプロダクションが特徴である。

本アルバムはカヴァー曲4曲、オリジナル曲6曲の計10曲を収録している。

「悪徳のジャングル(Stranded in the Jungle)」はドゥーワップ・グループのジェイホークス(The Jay Hawks)のシングル曲(1956年)のカヴァー。

「ショウ・ダウン((There’s Gonna Be A) Showdown)」はR&Bヴォーカル・グループのアーチー・ベル&ザ・ドレルズ(Archie Bell & The Drells)のヒット曲(1969年)のカヴァー。

「チャターボックス(Chatterbox)」はサンダースが作詞作曲者とヴォーカルを担当した曲。

「バッド・ディテクティヴ(Bad Detective)」は
R&B/ロックンロール・グループのザ・コースターズ(The Coasters)の曲(1964年)のカヴァー。

「ドント・スタート・ミー・トーキン(Don’t Start Me Talkin’)」はサニー・ボーイ・ウィリアムソンII(Sonny Boy Williamson II)のシカゴ・ブルースのヒット曲(1955年)のカヴァー。

「Stranded in the Jungle / Who Are the Mystery Girls?」と「(There’s Gonna Be A) Showdown / Puss ‘n’ Boots」は1974年にシングルとしてリリースされた。

収録曲

Side One

  1. “Babylon” (David Johansen, Johnny Thunders) – 3:31
  2. “Stranded in the Jungle” (James Johnson, Ernestine Smith) – 3:46
  3. “Who Are the Mystery Girls?” (Johansen, Thunders) – 3:08
  4. “(There’s Gonna Be A) Showdown” (Kenny Gamble, Leon Huff) – 3:38
  5. “It’s Too Late” (Johansen, Thunders) – 4:40

Side Two

  1. “Puss ‘n’ Boots” (Johansen, Sylvain Sylvain) – 3:06
  2. “Chatterbox” (Thunders) – 2:25
  3. “Bad Detective” (Keni St. Lewis) – 3:39
  4. “Don’t Start Me Talkin’” (Sonny Boy Williamson II) – 3:13
  5. “Human Being” (Johansen, Thunders) – 5:45

2010年再発SHM-CDボーナス・トラック

  1. “Courageous Cat Theme” (Johnny Holiday) – 2:22
  2. “Don’t Mess With Cupid” (Steve Cropper, Eddie Floyd, Deanie Parker) – 2:55
  3. “Lone Star Queen” (Kane, JoHansen, Nolan, Thunders, Sylvain) – 4:13
  4. “Give Her A Great Big Kiss” (George Morton) – 2:35

参加ミュージシャン

New York Dolls

  • David Johansen – vocals, gong
  • Arthur “Killer” Kane – bass
  • Jerry Nolan – drums, percussion
  • Sylvain Sylvain – guitar, piano, vocals
  • Johnny Thunders – guitar, vocals