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ザ・バニシング -消失-(1988年)

概説

『ザ・バニシング -消失-(Spoorloos)』は、ある女性の失踪事件を、女性の恋人と女性を誘拐した男の2つの視点から描いた1988年のサイコスリラー映画である。フランスとオランダの合作。監督はジョルジュ・シュルイツァー。脚本はティム・クラベーの小説『失踪』(1984年)の翻案。107分。

あらすじ

映画の序盤は、オランダ人の若いカップル、レックス・ホフマン(ジーン・ベルヴォーツ)とサスキア・ワグター(ヨハンナ・テア・ステーゲ)を中心に展開する。7月、2人は休暇を別荘地で過ごすために車でフランスに旅行に出かけていた。

2人はサービスエリアで車を止める。飲み物を買いに行ったサスキアは、そのまま忽然と姿を消してしまう。レックスは必死にサスキアを捜す。

その後、映画の視点は誘拐犯へと切り替わる。フランスの化学教授、レイモン・ルモン(ベルナール・ピエール・ドナデュー)はフランス南部のニームで妻と2人の娘と暮らしていた。レイモンは若い女性を誘拐し殺害する計画を立てるが、それは彼にとって、「究極の悪」を完全犯罪として実行するという1つの実験だった。

レイモンは綿密な計画を立てる。計画のために山荘を購入し、誘拐のシミュレーション─腕にギプスをはめ、怪我人を装って女性に助けを求め、クロロホルムで失神させ、車で連れ去る─を何度も繰り返す。

レイモンは誘拐をしようとして何度も失敗するが、図らずもサスキアを誘拐することに成功する。

サスキアが失踪してから3年後。何かに取り付かれたかのような執念を持ってサスキアの捜索を続けていたレックスの元に誘拐犯から手紙が届く。サスキアの身に何が起こったのかを知るために、レックスは誘拐犯に接触を試みる。

解説

この映画の恐ろしいところは、誘拐犯が、たまたま反社会的な性格を持つに至った、ごく普通の人間として描かれていることである。映画の途中で、観客は自分がレックスだけではなくレイモンにも感情移入していることに気づく。正常と異常がいかに紙一重かということ、あるいは「悪の陳腐さ」(ハンナ・アーレント)ということについて考えさせられる。

スタンリー・キューブリックは本作を、今までに観た映画の中で最も恐ろしい映画だと評した。

ジョルジュ・シュルイツァーが監督した1993年のアメリカ映画『失踪 妄想は究極の凶器(The Vanishing)』は、本作のリメイクである。

映画『 ザ・バニシング−消失−』予告編