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Vijay Iyer Trio: Historicity (2009)

概説

『ヒストリシティ(Historicity)』は、アメリカ合衆国のジャズピアニスト・作曲家のヴィジェイ・アイヤー(Vijay Iyer)のトリオによるアルバムである。

制作の背景

1971年にニューヨークでインド系移民の息子として生まれたヴィジェイ・アイヤーは、1995年に初リーダー作『Memorophilia』を発表。その後、スティーヴ・コールマン(Steve Coleman)を起点とする1980年代後半のコンセプチュアルなジャズ・ムーヴメント「Mベース(M-Base)」に影響を受け、ロスコー・ミッチェル(Roscoe Mitchell)やジョージ・ルイス(George E. Lewis)を中心として1965年にシカゴで創立された団体「AACM」の前衛ジャズの流れを継承する、現代的で理知的な音楽で知られるようになった。

解説

『ヒストリシティ』はヴィジェイ・アイヤー(piano)、ステファン・クランプ(bass)、マーカス・ギルモア(drums)のトリオによって2008–2009年に録音され、2009年にACTレーベルから発売された。

硬質なタッチと、変拍子とポリリズムを含む変幻自在のリズムと断片的な旋律による複雑な構成の楽曲が特徴の音楽である。アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)からの強い影響がうかがえる。

マーカス・ギルモアのグルーヴ感のある超絶技巧ドラムが素晴らしい。ステファン・クランプのボウイング奏法のベースも効果を発揮している。

本アルバムはアイヤーによるオリジナル曲4曲とカヴァー6曲で構成されている。

「Somewhere」はレナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)が作曲した1957年のブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド物語』の曲のカヴァー。

「Galang (Trio Riot Version)」はイギリスのミュージシャン、M.I.A.の最初のシングル曲でアルバム『アルラー(Arular)』(2005年)の収録曲「Galang」(2003年)のカヴァー。

「Smoke Stack」はアンドリュー・ヒルの楽曲で1966年の同名のアルバムの収録曲のカヴァー。

「Big Brother」はスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の曲で1972年のアルバム『トーキング・ブック(Talking Book)』の収録曲のカヴァー。

「Dogon A.D.」はジュリアス・ヘンフィル(Julius Hemphill)の楽曲で1972年の同名のアルバムの収録曲のカヴァー。

「Mystic Brew (Trixation Version)」はロニー・フォスター(Ronnie Foster)の楽曲で1972年のアルバム『Two Headed Freap』の収録曲「Mystic Brew」のカヴァー。

本作は『ダウン・ビート』誌、『ヴィレッジ・ヴォイス』紙、『ニューヨーク・タイムズ』紙を含む多くの新聞・雑誌で2009年の年間最優秀ジャズ・アルバムに選出され、第53回グラミー賞(2011年)で最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム賞にノミネートされた。

Vijay Iyer – Historicity