概説
『サウンド(Sound)』はアメリカ合衆国の作曲家・マルチ楽器奏者、ロスコー・ミッチェル(Roscoe Mitchell)のデビューアルバムである。
制作の背景
ロスコー・ミッチェルは1940年にイリノイ州シカゴで生まれた。
ミッチェルは非営利組織AACM(Association for the Advancement of Creative Musicians/創造的ミュージシャンの進歩のための協会)と前衛ジャズアンサンブルのアート・アンサンブル・オブ・シカゴ(Art Ensemble of Chicago/AEC)のメンバーの一人として知られている。
ミッチェルは1965年にジョディー・クリスチャン(piano)、スティーヴ・マッコール(drums)、フィル・コーラン(composer)とともにAACMの最初のメンバーとなった。
ミッチェルは1966年にAACMのメンバーとともに最初のスタジオ録音アルバム『サウンド』を録音した。
解説
アルバム『サウンド』は1966年にサウンド・スタジオ(シカゴ)で録音され、同年にインディペンデント系レコード・レーベルのデルマーク・レコードからLPとして発売された。
本作はAACMのメンバーによる最初の録音であり、AECの原点と捉えることも可能である。
アルバム『サウンド』は音をテクスチャとして提示し、空間の概念を導入することによって集団即興演奏の可能性を拡張した、前衛ジャズ史上の重要作である。
本作は、後のAECのメンバー3人、ロスコー・ミッチェル、レスター・ボウイ、マラカイ・フェイヴァースにモーリス・マッキンタイア、レスター・ラシュリー、アルヴィン・フィールダーが加わったセクステットによる集団即興演奏で構成されている。
伝統的なジャズ楽器に加えてリコーダーやハーモニカ、ホイッスル、トイ楽器、非音楽的なノイズなどを導入した、現代音楽風のアブストラクトなフリー・ジャズである。音響と静寂の対比が印象的である。
「オーネット」はAACMの活動に最も直接的に影響を与えたミュージシャンの一人であるオーネット・コールマン(Ornette Coleman)に捧げられた曲である。
1996年にデルマーク・レコードから発売されたCDには、「Sound」の2テイク(オリジナルのLPでは1つに編集されていた)と「Ornette」の別ヴァージョン(別アレンジ)も収録されている。
デルマーク・レコードは2018年に本作を「Art Ensemble Of Chicago Series」のVol.1としてCDで再発売した。これはエンジニアのスチュ・ブラックによるオリジナルのアナログ・ミックスからの初の再発である。
クレジット
- Roscoe Mitchell – alto saxophone, clarinet, flute, recorder
- Lester Bowie – trumpet, flugelhorn, harmonica
- Malachi Favors – bass
- Maurice McIntyre – tenor saxophone
- Lester Lashley – trombone, cello
- Alvin Fielder – percussion
収録曲
全曲の作曲はロスコー・ミッチェル。
オリジナルLP
Side One
- Ornette – 5:22
- The Little Suite – 10:20
Side Two
- Sound – 21:30
再発盤CD
- Ornette [alternative take] – 5:44
- Sound 1 – 26:36
- The Little Suite – 10:27
- Ornette – 5:29
- Sound 2 – 19:24