概説
『ムーンドーン(Moondawn)』は、1960年代末から1970年代初頭にかけてドイツの電子音楽/クラウトロックのグループ、タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)とアシュ・ラ・テンペル(Ash Ra Tempel)のメンバーとして活動し、1970年代以降はソロ・アーティストとして活動した、電子音楽の開拓者として知られる1947年ベルリン生まれのドイツの作曲家・ミュージシャン、クラウス・シュルツェ(Klaus Schulze)の6作目のソロアルバムである。
解説
本アルバムは1976年にシュルツェ(Moog, ARP 2600, ARP Odyssey, EMS Synthi-A, Farfisa Syntorchestra, Crumar keyboards, Sequenzer Synthanorma 3-12)とハラルド・グロスコフ(drums)によって録音され、ドイツのブレイン・レコーズから発売された。
『ムーンドーン』はシュルツェがモーグ・シンセサイザーを初めて使用したアルバムである。シュルツェは本アルバムで、初期のドローン・ベースのスタイルから、「ベルリン・スクール(Berlin School)」と呼ばれる、シンセサイザーをベースにしたスペイシーでアンビエントなスタイルに移行した。
『ムーンドーン』は電子音楽の分野における古典的な名作の一つである。その瞑想的な音風景はアンビエントやニューエイジ・ミュージックの先駆けであり、シーケンサー主導のリズミックなサウンドは後のテクノやトランスを予兆している。
オリジナルのLPは20分超の曲2曲、「Floating」(27:15)と「Mindphaser」(25:22)を収録している。
「Floating」はアラビア語による「主の祈り」で始まる、催眠的な効果のある曲である。
シュルツェは本作が1990年代初頭にCDで再発された際に、テープヒスのノイズを隠すためにメロトロンと残響を加え、曲をオリジナルのLPよりもわずかに短くした。
1995年にManikin Recordsから再発されたCDと2005年にRevisited Rec.から再発されたCDはオリジナルのマスターテープを基にしている。
1995年のManikin Recordsの再発版は「Mindphaser」の別バージョン「Supplement」(25:22)をボーナス・トラックとして収録。
2005年のRevisited Rec.の再発版は「Floating」の別バージョン「Floating Sequence」(21:11)をボーナス・トラックとして収録。