概説
『ローカスト・アボーション・テクニシャン(Locust Abortion Technician)』は、アメリカ合衆国のロックバンド、バットホール・サーファーズ(Butthole Surfers)の3作目のフルレングスのスタジオ録音アルバムである。
制作の背景
バットホール・サーファーズは1981年にテキサス州サンアントニオでギビー・ヘインズ(lead vocals)とポール・リアリー(guitar)によって結成され、1980年代のハードコア・パンク・シーンでパンク、サイケデリア、ノイズロックの要素を取り入れたサウンドで知られるようになったバンドである。
解説
アルバム『ローカスト・アボーション・テクニシャン』は1986年に録音され、1987年にアメリカのインディーズレーベル、タッチ・アンド・ゴーから発売された。本作はイギリスのインディーズアルバムチャートで3位を記録した。
本作は一般的にサーファーズの最高傑作とされているアルバムである。
アルバムタイトルの「Locust Abortion」は「low-cost abortion」(低料金の中絶)のもじりである。「Locust Abortion Technician」だと「イナゴの堕胎の専門家」という意味になってしまう。
本アルバムはパンク、ヘヴィメタル、テキサス・サイケデリアの要素を混合した実験的なノイズロックの楽曲で構成されている。
本作はミュジーク・コンクレート的なテープ編集、ディストーション・ギター、ピッチ変調などのエフェクトを多用した奇怪なヴォーカルが特徴である。
バットホール・サーファーズが「Kuntz」以外の全曲の作詞作曲、プロデュースを手がけている。
一部の曲は「ギビトロニクス(Gibbytronix)」と呼ばれるギビー・ヘインズのヴォーカル・エフェクト装置を用いて作られている。
「Sweat Loaf」はブラック・サバス(Black Sabbath)の曲「Sweet Leaf」(1971年)のギターリフのパロディー的な引用を含んでいる。
「Kuntz」はタイのルクトゥン(大衆歌謡)の歌手、プラーン・プロムデーンが歌った曲「Klua Duang/กลัวดวง(恐怖)」(1987年)のぶっ壊れたリミックス・バージョン。この曲では女性器を意味する英語の四文字言葉(Cワード)の複数形のように聞こえる言葉が何回も繰り返されている。曲のタイトルはその英単語のドイツ語風の綴り。
カート・コバーンはオールタイム・トップ50アルバムのリストに本作を含めた。
本作はロバート・ディメリーの『死ぬ前に聴くべき1001枚のアルバム』にも選出されている。
2018年にアメリカのオンライン音楽雑誌、ピッチフォークは「1980年代のベストアルバム200」に本作を含めた。
1999年に本アルバムのリマスター版がサーファーズのレーベル、Latino Buggerveilから発売された。
収録曲
Side A
- Sweat Loaf – 6:09
- Graveyard – 2:27
- Pittsburgh to Lebanon – 2:29
- Weber – 0:35
- HAY – 1:50
- Human Cannonball – 3:51
Side B
- U.S.S.A. – 2:14
- The O-Men – 3:27
- Kuntz – 2:24
- Graveyard – 2:45
- 22 Going on 23 – 4:23
クレジット
- Gibby Haynes – lead vocals
- Paul Leary – guitar
- Jeff Pinkus – bass
- King Coffey – drums
- Teresa Nervosa – drums