概説
『ジャズ・アルバム(The Jazz Album)』は、旧ソ連の作曲家、ドミートリイ・ショスタコーヴィチが西欧のポピュラーやダンス音楽の影響下で作曲した、ユーモラスで機知に富んだ楽曲を集めた作品集である。
本アルバムは1988–1991年にアムステルダムのコンセルトヘボウでリッカルド・シャイー(指揮)、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ロナルド・ブラウティハム(ピアノ)、ペーテル・マシュールス(ペーター・マスーズ)(トランペット)によって録音され、1993年にデッカ・レコードから発売された。
アルバムのタイトルは『ジャズ・アルバム』だが、ダンス音楽風の軽妙な楽曲を収録しており、ジャズの要素はほとんどない。
収録曲
ジャズ組曲第1番
『ジャズ・オーケストラのための組曲第1番』はショスタコーヴィチが1934年に作曲した組曲。
ワルツ、ポルカ、フォックストロットの3つの楽章で構成されている。
プロムナード・コンサートのようなポピュラー志向の曲である。
演奏時間は約8分。
ショスタコーヴィチはこの曲のワルツを自身のバレエ音楽『明るい小川』(1935年)で使用した。
ピアノ協奏曲第1番 ハ短調 作品35
『ピアノとトランペット、弦楽合奏のための協奏曲 ハ短調』作品35はショスタコーヴィチが1933年に作曲したピアノ協奏曲。
シニカルなユーモアとウィットに富んだリズミカルで狂騒的な曲である。
3つまたは4つの楽章で構成されているが、1楽章の曲として解釈することもできる。
演奏時間は約20分。
この協奏曲はショスタコーヴィチ自身の自作と他の作曲家の作品の引用を数多く含んでいるのが特徴である。
この曲はショスタコーヴィチの自作、劇付随音楽『ハムレット』作品32(1931–32年)や劇付随音楽『約束どおり殺された』作品31(1931年)からの引用を含んでいる。
この協奏曲は他の数多くの音楽作品をパロディー化している。ベートーヴェンの『熱情』ソナタの参照で始まり、ベートーヴェンの『失われた小銭への怒り』とハイドンの『ピアノ・ソナタ ニ長調』Hob. XVI:37の引用で終わる。
オーストリアの民謡『愛しいアウグスティン(O du lieber Augustin)』とイギリスの童謡『Poor Mary(Poor Jenny)』も引用されている。
ジャズ組曲第2番(舞台管弦楽のための組曲第1番)
曲名が誤って『ジャズ組曲第2番』と記載されているが、正しい曲名は『舞台管弦楽のための組曲第1番』である。
1999年に『ジャズ組曲第2番』(1938年)のピアノ楽譜が再発見されるまで、この曲は失われた『ジャズ組曲第2番』として誤認されていた。
ショスタコーヴィチの作曲に基づいてレヴォン・アトフミャンが1956年以降に編曲した、8楽章からなる組曲である。
各楽章はショスタコーヴィチがバレエ、演劇、映画のために書いたスコアの編曲である。
演奏時間は約20分。
この録音の『舞台管弦楽のための組曲第1番』の第2ワルツは、スタンリー・キューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』(1999年)とマルレーン・ゴリスの『愛のエチュード』(2000年)のサウンドトラックで使用された。
タヒチ・トロット
オーケストラのための『タヒチ・トロット』作品16(1927年)は、ヴィンセント・ユーマンスによるミュージカル・コメディー『ノー・ノー・ナネット』(1928年)の曲「二人でお茶を(Tea for Two)」をショスタコーヴィチが交響楽団用に編曲した作品である。
演奏時間は約4分。