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17歳の瞳に映る世界(2020年)

概説

 『17歳の瞳に映る世界』(英語原題: Never Rarely Sometimes Always)はエリザ・ヒットマンの監督・脚本による2020年のドラマ映画である。

出演はシドニー・フラニガン、タリア・ライダー、テオドール・ペルラン、ライアン・エッゴールド、シャロン・ヴァン・エッテン。

望まない妊娠をしたために、両親に知られずに中絶手術を受けようとして、いとことともにペンシルベニア州からニューヨーク市へと旅をする17歳の少女を描いている。

製作はアデル・ロマンスキー、サラ・マーフィ。

撮影はエレーヌ・ルヴァール。

音楽はジュリア・ホルター。

アメリカ合衆国とイギリスの共同制作。101分。

プロットの概要

ペンシルベニア州に住む17歳の高校生、オータム・キャラハン(シドニー・フラニガン)はある日、自分が妊娠していることを知る。

ペンシルベニア州では18歳未満の未成年は両親の同意なしに中絶手術を受けることができないことを知ったオータムは、両親に知られずに中絶手術を受けるために、いとこでただ一人の友人のスカイラー(タリア・ライダー)とバスでニューヨーク市へと向かう。

解説

基本情報

『17歳の瞳に映る世界』は、『愛のように感じた』(2013年)、『ブルックリンの片隅で』(2017年)に続いてヒットマンが監督した3作目の長編映画である。

本作は人工妊娠中絶の問題を題材にしたドラマ映画である。女性間の友情と連帯を描いた青春映画、ロードムービーとしても観賞できる。

本作は2019年にニューヨーク市とペンシルベニア州のシャモーキンでロケーション撮影された。

本作は2020年にサンダンス映画祭で世界初公開され、第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した。

本作のスタイルについて

本作のスタイルは、単純なプロット、クローズアップと長回しの多用、最小限に抑えられた台詞と音楽、ドキュメンタリー風の自然主義的な演出、劇的な語りの排除、などが特徴である。

本作は言葉で多くを語らずに物語を視覚的に見せることによって、観客を主人公のオータムに共感させることを試みている。

撮影監督のルヴァールのカメラはオータムを親密なまなざしで寄り添うように追い続ける。

オータムとスカイラーが会話をする場面は少ないが、2人がそっと手を握り合う場面は2人が強い絆で結ばれていることを暗に示している。

誰がオータムを妊娠させたのか。オータムはなぜ母親に相談せずにスカイラーと2人だけで問題に対処しようとするのか。そのような物語の背景については映画の中では説明されていない。オータムの継父のテッドがオータムを性的に虐待して妊娠させたと解釈することもできるが、それは映画の中では明示されていない。

「一度もない めったにない 時々 いつも」

本作の英語のタイトル「一度もない めったにない 時々 いつも(Never Rarely Sometimes Always)」は、ニューヨーク市のクリニックでオータムが中絶手術を受ける前にカウンセラー(ソーシャルワーカー)のケリーと話す場面に由来している。

この場面でケリーはオータムに、避妊や性暴力などを含む性的パートナーとの関係についての一連の質問をして、質問に「一度もない」「めったにない」「時々」「いつも」のいずれかで答えるように言う。

この場面は実在の施設であるニューヨーク市のプランド・ペアレントフッド(全米家族計画連盟)で16ミリフィルムのカメラによる長回しで撮影された。実際にカウンセラーとして働いているケリー・チャップマンがカウンセラー役を演じている。

オータムは感情をあまり表に出さない人物として描かれているが、この場面でオータムは性的虐待についての質問をされた時に初めて感情をあらわにする。

エキサイターズ「ヒーズ・ゴット・ザ・パワー」(1963年)

映画の冒頭のシーンで、学校のタレント・コンテストに出場したオータムはギターの弾き語りで歌(「彼は私に私がしたくないことをさせる…(He makes me do things I don’t wanna do…)」)を歌う。この歌はアメリカのポップグループ、エキサイターズ(The Exciters)のシングル曲「ヒーズ・ゴット・ザ・パワー(He’s Got the Power)」(1963年)のバラード・バージョンである。

あらすじ(ネタバレ注意)

17歳の高校生、オータム・キャラハン(シドニー・フラニガン)は、ペンシルベニア州ノーサンバーランド郡のエレンズボロ(架空の町)で母(シャロン・ヴァン・エッテン)、継父のテッド(ライアン・エッゴールド)、2人の幼い妹と暮らしている。

オータムは愛想のない少女で、いとこのスカイラー(タリア・ライダー)がただ一人の友人だった。オータムとスカイラーは食料品店でアルバイトをしていた。

自分が妊娠しているのではないかと疑ったオータムは危機妊娠センターへ行く。検査結果は陽性で、オータムは自分が妊娠10週であることを知る。オータムはセンターで養子縁組の資料を渡され、「つらい真実(Hard Truth)」というタイトルの中絶反対のビデオを見せられる。

ペンシルベニア州では18歳未満の未成年は両親の同意なしに中絶手術を受けることができないことを知ったオータムは、ビタミンCの錠剤を飲んで腹を叩き、自己誘発中絶を試みるが失敗する。

オータムはいとこのスカイラーに妊娠していることを告げる。オータムはスカイラーとともに長距離バスでニューヨーク市に行き、中絶手術を受ける計画を立てる。

スカイラーは2人のバイト先の食料品店から現金を盗み、2人はニューヨーク市行きのバスの乗車券を購入する。

オータムとスカイラーはバスに乗り、ニューヨーク市に向かう。

バスの中でジャスパーという名の青年(テオドール・ペルラン)がスカイラーに話しかけてくる。ジャスパーはスカイラーをライブ・コンサートに誘うが、スカイラーは忙しいからと言って断る。スカイラーはジャスパーと連絡先を交換する。

オータムはブルックリンのプランド・ペアレントフッド(全米家族計画連盟)のクリニックで超音波検査を受け、実は妊娠18週だったことが判明する。

クリニックの職員はオータムに、この施設では最終月経開始日から12週を過ぎていると中絶手術ができないと告げる。職員はオータムに、明日の朝に診てくれるマンハッタンの施設を紹介する。

オータムとスカイラーは地下鉄に乗ったりゲームセンターでゲームをしたりして夜を過ごす。

翌朝オータムはマンハッタンのクリニックに行く。オータムは両親に知られずに中絶手術を受けるために保険適用外で自費で支払うことにする。財務相談員はオータムに、民間基金の援助が受けられることを伝える。

カウンセラー(ソーシャルワーカー)のケリーはオータムに、妊娠中絶が2日かかることを告げる。

ケリーはオータムに妊娠中絶を決意した理由を尋ねる。オータムは母親になる準備ができていないと答える。

ケリーはオータムに、避妊や性暴力などを含む性的パートナーとの関係についての一連の質問をして、質問に「一度もない」「めったにない」「時々」「いつも」のいずれかで答えるように言う。

ケリーはオータムに、誰かに性行為を強要されたことがあるかと尋ねる。オータムは涙ぐみながらあると答える。

オータムは手術室で前処理を受ける。一晩かけて子宮頸管を広げるために、医師がオータムの子宮頸管にラミナリアを挿入する。処理の間、ケリーはオータムの手を握る。

オータムとスカイラーは中絶手術の予約金を支払って資金が尽きたことに気付く。スカイラーは帰りの交通費を借りるためにジャスパーを呼び出す。

ジャスパーは2人をボウリングやカラオケに連れて行く。

オータムはボウリング場のトイレで股間から出血していることに気付く。オータムは思わず母親に電話をかけるが、何も話せない。

その夜、スカイラーはジャスパーにバスの乗車券を買うためのお金を貸してほしいと頼む。ジャスパーは承諾する。

ジャスパーとスカイラーはオータムを駅に残してATMを探しに行く。

2人が戻ってこないのでオータムは2人を捜しに行くが、2人が見つからない。駅に戻ったオータムは2人が柱に隠れてキスをしているのを発見する。オータムはスカイラーの手をそっと握る。

ジャスパーはATMからお金を卸してスカイラーに手渡す。ジャスパーはスカイラーにまたメールすると言って去る。

翌朝、オータムは中絶手術を受ける。

レストランで食事をしたオータムとスカイラーはバスに乗ってペンシルベニア州に帰る。