概説
『アントゥルー(Untrue)』は、南ロンドン出身のイギリスのエレクトロニック・ミュージシャン、プロデューサー、ベリアル(Burial、本名: William Emmanuel Bevan。日本語ではブリアルとも表記される)の2作目のスタジオ録音アルバムである。
2007年11月5日にハイパーダブ(Hyperdub)からリリースされた。
「Archangel」、「Ghost Hardware」はシングルとしてリリースされた。
本作はUKガレージ、2ステップ、ジャングル、ハードコアなどのイギリス産ダンスミュージックの系譜を受け継ぎつつ、ダブステップとアンビエント要素を融合させた作品として位置づけられる。

解説
制作の背景
ベリアル(ウィリアム・ビヴァン)は1980年代後半生まれで、南ロンドンで育った。兄の影響で1990年代のジャングルやガレージのレイヴ文化に触れたが、本人はその現場に直接参加する世代ではなかった。この「間接的な経験」が、彼の音楽に独特のノスタルジアと疎外感を生み出している。
デビューアルバム『Burial』(2006年)で注目を集めた後、2作目の制作では当初より複雑な機材を使った試みを行ったが、それらを破棄し、簡易なデジタルオーディオ編集ソフトのSound Forge(サウンドフォージ)を使って約2週間で新たに本作を完成させた。この制約が、不均一で人間的なリズムや粗いテクスチャを生む要因となった。
音楽的特徴
本アルバムの音響的基盤は、ビニールノイズ、雨音や都市の環境音のようなフィールドレコーディング的要素、歪んだ低域のベース、そしてR&Bボーカルサンプルをピッチシフト・タイムストレッチで加工した声である。これらのサンプルは性別や感情の境界を曖昧にし、断片的・幽霊的な質感を生み出す。リズムはSound Forgeの非量子化特性により、意図的にずれや揺らぎを持ち、伝統的なダンスミュージックの4/4グリッドから逸脱している。
全体として、夜のロンドンの地下鉄や空き地、深夜の街路を思わせるディストピア的で孤独な音風景を形成する。感情的には、切迫した恋愛の喪失感や疎外感を扱いつつ、希望の残滓も含む。先行作品よりボーカル要素が大幅に増え、抽象的なダブステップからよりメロディックで感情移入可能な構造へ移行した点が特徴的である。
1曲目の「Archangel」は本アルバムを象徴する曲で、加工されたR&Bボーカルがメロディックに展開し、荘厳さと憂鬱さが共存する。多くの批評家が本作のハイライトとし、ベリアルの代表曲となった。
リリース履歴・チャート・受容
本アルバムは全英アルバムチャートで58位を記録し(ダウンロードでは18位)、批評家からは絶賛され、複数の媒体で2007年の年間ベストアルバムに選出された。2008年にはマーキュリー賞にノミネートされた。
イギリスの音楽ジャーナリスト、サイモン・レイノルズは2017年の『Pitchfork』の記事で本作を「今のところ、今世紀で最も重要なエレクトロニック・アルバム」と評した。
音楽史的文脈と影響
本作は2000年代後半のダブステップシーンを象徴しつつ、クラブミュージックをホームリスニング向けの内省的表現へ拡張した。UKガレージ/2ステップの感情性を継承しつつ、抽象化・メランコライズすることで、後のフューチャーガレージ、ウィッチハウス、コンテンポラリー・エレクトロニックに影響を与えた。
ベリアルのサンプリング手法と音響テクスチャは、デジタルツールの制約を創造的に活用した例として、後続アーティストの制作姿勢に影響を及ぼしている。
収録曲
全13トラック、約50分。
- “Untitled” – 0:46
- “Archangel” – 3:58
- “Near Dark” – 3:54
- “Ghost Hardware” – 4:53
- “Endorphin” – 2:57
- “Etched Headplate” – 5:59
- “In McDonalds” – 2:07
- “Untrue” – 6:16
- “Shell of Light” – 4:40
- “Dog Shelter” – 2:59
- “Homeless” – 5:20
- “UK” – 1:40
- “Raver” – 4:59
Japanese CD issue bonus tracks
- “Shutta” – 5:02
- “Exit Woundz” – 5:49
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