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映像研には手を出すな!(2020年)

概説

『映像研には手を出すな!』は、大童澄瞳の同名の漫画(2016年より『月刊!スピリッツ』にて連載)が原作の日本のTVアニメシリーズである。2020年にNHK総合テレビで12話が放送された。

監督は湯浅政明。キャラクターデザイン・総作画監督は浅野直之。音楽はオオルタイチ。アニメーションプロデューサーはチェ・ウニョン。アニメーション制作はサイエンスSARU。

原作は3人の女子高生(浅草みどり、金森さやか、水崎ツバメ)によるアニメーション制作活動を描いた漫画で、テレビ情報誌『TV Bros.』の漫画賞「ブロスコミックアワード2017」で大賞を受賞している。

TVアニメシリーズは原作漫画の単行本第1巻から第3巻までの内容を翻案したもので、高校でのアニメ制作のクラブ活動が半商業的な同人活動へと発展してゆく過程を、コミカルな要素を織り交ぜながらサクセス・ストーリーとして描いている。

プロットの概要

時代設定は2050年代。水路が迷路のように入り組んでいる町、芝浜が舞台。芝浜高校は湖に面した人工島に位置している。

芝浜高校の1年生、浅草みどりは好奇心が旺盛で想像力が豊かな少女だった。浅草は小学6年の時に『残され島のコナン』という古いアニメーションを観て強い感銘を受けていた。

浅草は、度重なる増改築によって複雑なダンジョンと化した芝浜高校を舞台にしたアニメを制作する計画を抱いていた。

自分が想像した世界をアニメ制作によって具現化したい浅草はスケッチブックにイメージ画や設定を描き貯めていたが、人付き合いが苦手なため、実際にアニメを制作するための第一歩を踏み出せずにいた。

同級生の金森さやかを誘って学校のアニメ研究会のアニメ上映会にやって来た浅草は、そこでカリスマ読者モデルとして有名な同級生、水崎ツバメに出くわす。

水崎はアニメーター志望者だった。水崎にとって、アニメーションは演技だった。水崎は優れた観察眼の持ち主で、アニメーションによって事物のリアルで自然な動きを表現したいと思っていた。浅草はすぐに水崎と意気投合する。

しかし、水崎の両親は俳優で、水崎は娘を俳優にしたい父親の意向でアニ研への入部を禁じられていた。

金森は金儲けの才能がある現実主義者で、利益を生み出す活動を好み、対人折衝能力に秀でていた。金森は水崎の知名度を利用して金儲けができるかもしれないと考える。

浅草、水崎、金森の3人は「映像研究同好会」という名の同好会を新設し、チームとしてアニメ制作を開始する。浅草は監督、デザイナー、美術監督として、水崎はアニメーターとして働き、金森は対外折衝や宣伝活動を含むさまざまな仕事をこなしながらプロデューサー、制作進行の役割を担う。

解説

本作は、設定デザインやイメージボードに描かれた想像上の世界が動画作品として具現化されてゆくアニメーション制作過程のドラマを描いている。

各エピソードは現実世界のドラマのパートと想像の世界に入り込んでゆく空想のパートの2つのパートで構成されている。下描きや水彩画のような平面的な画像が再構成されて立体的な動画へと変化する、空想のパートの斬新な表現が本作の見どころである。

原作漫画では詳細には描かれていなかった映像研制作の短編アニメーションが、アニメ内アニメとして精巧に作り込まれているのも本作の特徴である。

第1話に登場するアニメ内アニメ『残され島のコナン』は、宮崎駿が監督し、1978年にNHK総合テレビで放送されたTVアニメシリーズ『未来少年コナン』の引用である。

TVアニメシリーズ『映像研には手を出すな!』は批評的に高い評価を受けている。米国では『ニューヨーク・タイムズ』紙が本作を「ベストTV番組2020」と「ベストTV番組2020・インターナショナル部門」の各リストの一つに選出した。『ザ・ニューヨーカー』誌も本作を「ベストTV番組2020」の一つに選出している。2021年度のクランチロール(Crunchyroll)のアニメアワードにて、本作は最優秀アニメーション賞と最優秀監督賞(湯浅政明)を受賞した。

日本では、本作は2021年度の東京アニメアワードフェスティバルの「アニメ オブ ザ イヤー部門」のファン投票にて1位となり、同部門の作品賞(テレビ部門)を受賞した。本作は第24回文化庁メディア芸術祭でアニメーション部門の大賞も受賞している。

TVアニメシリーズの他に、実写のTVドラマシリーズと実写映画が2020年に制作されている。

Keep Your Hands Off Eizouken! | OFFICIAL TRAILER 2

映像研が制作した短編アニメーション

TVアニメシリーズでは、映像研は下記の3本の短編アニメーションを制作している。

『そのマチェットを強く握れ!』

映像研の第1作。生徒会主催の予算審議委員会でのプレゼンのために制作された予告編風の短編アニメーション。

マチェットを持ち、ガスマスクを着けた少女と小型戦車の戦いを描いている。

水崎は当初手描きの作画にこだわっていたが、締め切りに間に合わせるために金森が自動中割り(ビトウィーン)ソフトを使用させた。

本作は予算審議委員会で上映された際に観衆に感銘を与え、生徒会は映像研への予算配分を承認した。

『SHIBA8 VS テッポウガニ』

映像研の第2作。ロボット研究部から依頼を受けて宣伝用の映画として制作された短編アニメーション。

学校の地下ピットで、カニのハサミを持ったカメのような架空の巨大生物「テッポウガニ」と戦う巨大ロボットの「SHIBA8」を描いている。

映像研は本作から完全デジタル制作に移行した。

浅草が画コンテを描き、水崎がアクションシーンを担当した。

背景美術は美術部に発注し、音響部の部員の百目鬼が音響を担当した。フリー素材を使用して音楽が付けられた。

本作は文化祭で上映された。台詞の録音が締め切りに間に合わなかったため、ロボ研の部員たちが上映中に生で声をあてた。

映像研は上映後に本作のDVDを予約販売した。

『芝浜UFO大戦』

映像研の第3作。自主制作物展示即売会「COMET-A」に出展してDVDを販売するために制作された短編アニメーション。

金森が町おこしのために芝浜を舞台にしたアニメを制作する企画について地元の団体(芝浜商工会)と交渉し、彼らに制作費を出資させることに成功した。

浅草は、水力発電所跡地や廃墟の中の時計塔、水没地域などの芝浜の珍スポットから着想を得て本作の世界観とストーリーを作った。その結果として、本作は武装都市の芝浜と海底に文明を築いた水棲人間たちとの戦争を描いた作品となった。

声優はオーディションによって選出された。

映像研はSNS経由でパアトショウジという名の人物に本作への音楽の提供を依頼したが、パアトショウジが作曲したのはピアノ曲が1曲だけで、その曲は作品の各場面、特に水崎が作画した最後のダンスシーンとはまったく合っていなかった。

上映会とDVD制作の締め切りまでに音楽を再発注する時間がなく、浅草が結末の部分に疑問を抱いていたため、浅草は締め切り間際に音楽に合わせて全体を再調整し、結末の部分を大幅に変更した。

『芝浜UFO大戦』のDVDはCOMET-Aで完売となった。