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Hawkwind: Space Ritual (1973)

概説

『宇宙の祭典』(原題: The Space Ritual Alive in Liverpool and London、通称: Space Ritual)は、イギリスのロックバンド、ホークウインド(Hawkwind)が1972年に録音し、1973年に4作目のアルバムとしてリリースしたライブ・アルバムである。

制作の背景

ホークウインドは1969年にデイヴ・ブロック(guitar, vocals)を中心としてロンドンで結成され、1970年にデビューアルバム『ホークウインド(Hawkwind)』をリリースした。その後、サイケデリック・ロック、プログレッシブ・ロック、ハードロックの要素と宇宙を題材にしたSF的な歌詞を組み合わせたスペース・ロックで知られるようになった。

ホークウインドはレミー/イアン・キルミスター(bass guitar, vocals)がモーターヘッド(Motörhead)を結成する前の1971年から1975年にかけてメンバーとして在籍していたことでも知られている。

解説

本作は3作目のスタジオ録音アルバム『ドレミファソラシド(Doremi Fasol Latido)』(1972年)のプロモーションのための「Space Ritual」ツアー中の1972年12月22日にリヴァプール・スタジアムで、1972年12月30日にロンドンのブリクストン・サンダウンで、それぞれ録音されたライブ演奏を収録している。

ホークウインドは「Space Ritual」ツアー中に、ライトショーやレーザー、ダンサー、作家・詩人のロバート・カルヴァートによる詩の朗読を含むスペクタクルな視聴覚パフォーマンスを行った。

「Space Ritual」のショーのコンセプトは「天球の音楽(musica universalis)」と呼ばれるピタゴラスの天体力学理論に基づいており、ストーリーは冷凍睡眠中の宇宙飛行士が見た夢をテーマにしていた。

本作のオリジナルは1973年にユナイテッド・アーティスツ・レコードから(日本ではリバティ・レコードから)2枚組LPとして発売され、全英アルバムチャートで9位、全米ビルボードトップ200で179位を記録した。

メンバーは、デイヴ・ブロック(guitar, vocals)、ニック・ターナー(saxophone, flute, vocals)レミー(bass guitar, vocals)、ディック・ミック/マイケル・デイヴィス(audio generator, electronics)、デル・デットマール(synthesizer)、サイモン・キング(drums)、ロバート・”ボブ”・カルヴァート(poetry, vocals)、スタシア(dancer and visual artist)。

『宇宙の祭典(Space Ritual)』はスペース・ロックのジャンルにおける傑作として定評があるアルバムである。

本アルバムにはスペース・ロックのヒット・シングル「シルバー・マシーン(Silver Machine)」(1972年)が収録されていないが、1970年代初頭のサイケデリック・ロック期のホークウインドの最高傑作としてしばしば言及されるアルバムである。

スペイシーなコンセプトはプログレッシブ・ロック的だが、音楽自体はエフェクトを多用したトリッピーな轟音サイケデリック・ロックである。プログレッシブ・ロックやハードロックよりもクラウトロックやMC5、ブルー・チアー(Blue Cheer)、ストゥージズ(The Stooges)などのガレージロックに近い。

レミーによるメロディックな和音ベース、ブロックによるワウペダルやディストーションなどのエフェクトを用いたギター、ターナーによるフリー・ジャズ風のアルトサックスとフルートの演奏、電子音によるエフェクト、クラウトロックのような反復リフと長い演奏が特徴である。

レミーのベースギターがリード楽器としてバンド全体の演奏を主導している。

「ダウン・スルー・ザ・ナイト(Down Through the Night)」、「ロード・オブ・ライト(Lord of Light)」、「スペース・イズ・ディープ(Space Is Deep)」、「ブレインストーム(Brainstorm)」は3作目のスタジオ録音アルバム『ドレミファソラシド(Doremi Fasol Latido)』(1972年)の収録曲。

「ロード・オブ・ライト」はアメリカ合衆国の作家のロジャー・ゼラズニイの同名のSF小説『光の王』(1967年)を基にしている。

「ジ・アウェイクニング(The Awakening)」、「ブラック・コリドー(The Black Corridor)」、「10セコンズ・オブ・フォーエヴァー(10 Seconds of Forever)」、「ソニック・アタック(Sonic Attack)」は電子効果音とロバート・カルヴァートによる詩の朗読。

「ブラック・コリドー」はイギリスの作家のマイケル・ムアコックの同名のSF小説『暗黒の廻廊』(1969年)からの引用を含んでいる。ムアコックは「ソニック・アタック」の詩も書いている。

「セブン・バイ・セブン(Seven By Seven)」はシングル「シルバー・マシーン(Silver Machine)」のB面曲。

「マスター・オブ・ザ・ユニヴァース(Master of the Universe)」は2作目のスタジオ録音アルバム『イン・サーチ・オブ・スペース/宇宙の探究(In Search of Space)』(1971年)の収録曲。

「オルゴン・アキュムレーター(Orgone Accumulator)」は、オーストリア出身の医学博士・精神分析医のヴィルヘルム・ライヒのオルゴンエネルギー理論に基づくオルゴン集積器を題材にした曲。

2007年に本アルバムのリマスター版(2CD+DVD)がEMIから発売された(2CD版は2013年に発売)。

Master of the Universe (Live) (2007 Remaster)