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Sabu Martinez: Palo Congo (1957)

『パロ・コンゴ(Palo Congo)』は、アート・ブレイキー(Art Blakey)、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)、J・J・ジョンソン(J.J. Johnson)との共演やアフロ・キューバン音楽の録音で知られるプエルトリコ系アメリカ人のコンゲーロ(コンガ奏者)・打楽器奏者、サブー・マルティネス(Sabu Martinez、本名: ルイス・マルティネス、1930–1979年)の初リーダー作である。

本作は1957年に録音され、同年にブルーノート・レコードから発売された(Blue Note BLP-1561)。プロデュースはアルフレッド・ライオン。レコーディング・エンジニアはルディ・ヴァン・ゲルダー。

マルティネスは1950年代後半に自身のクインテットとともに『パロ・コンゴ』(1957年)、『サファリ・ウィズ・サブー(Safari with Sabu)』(1958年)、『ソーサリー!(Sorcery!)』(1958年)の3つのリーダー作を録音しているが、『パロ・コンゴ』はその中でもアフロ・キューバン/ラテン音楽の傑作として名高いアルバムである。

本作の演奏はマルティネスを含む5人の打楽器奏者によるラテン・パーカッション(コンガ、ボンゴ)を中心としており、キューバのミュージシャン・作曲家のアルセニオ・ロドリゲス(Arsenio Rodríguez)のギターとトレス(複弦3コースの弦鳴楽器)、ダブルベース、ヴォーカル、チャント(詠唱)を含んでいる。

楽曲には、キューバの伝統的なルンバやソン、プエルトリコのプレナ、サンテリア(西アフリカのヨルバ人の宗教とキリスト教のローマ・カトリシズム、心霊主義が習合して成立したキューバの民間信仰)の宗教音楽などのさまざまな様式が導入されている。

アフリカ由来のリズムとラテンのリズムを組み合わせた複雑なポリリズム、ゴスペルのコールアンドレスポンスに似たスペイン語のチャント、民俗音楽のような土着性が特徴である。

モダン・ジャズよりも純粋なアフロ・キューバン音楽やアフリカの儀礼音楽に近い。ハード・バップの録音が大半を占めるブルーノートの1500番台の中では異色のアルバムである。

マルティネスがヴォーカルを担当した1曲目「エル・クンバンチェロ(El cumbanchero)」は、プエルトリコの作曲家のラファエル・エルナンデス(Rafael Hernández)が1943年に作詞作曲したポピュラーソングのカヴァー。

3曲目の「チェフリート・プレーナ(Choferito-Plena)」はイグナシオ・リオス(Ignacio Ríos)が作詞作曲したサルサ曲。アメリカ合衆国のギタリスト・作曲家のマーク・リボー(Marc Ribot)はアルバム『マーク・リボー・イ・ロス・キューバノス・ポスティソス(ザ・プロスセティク・キューバンズ)(Marc Ribot y Los Cubanos Postizos (The Prosthetic Cubans))』(1998年)でこの曲をカヴァーしている。

その他の6曲はマルティネスのオリジナル曲。

6曲目の「素晴らしき幻想(Rhapsodia del Maravilloso)」でロドリゲスのラテンギターの即興演奏が聴ける。この曲ではキューバの作曲家のモイセス・シモンが作曲したプレゴン(物売り歌)「南京豆売り(El manisero)」が引用されている。

Rhapsodia Del Maravilloso – SABU