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The Chemical Brothers: Dig Your Own Hole (1997)

概説

『ディグ・ユア・オウン・ホール(Dig Your Own Hole)』は、トム・ローランズ(Tom Rowlands)とエド・サイモンズ(Ed Simons)によるイングランドのエレクトロニック・ミュージック・デュオ、ケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)の2作目のスタジオ録音アルバムである。

1997年4月7日にイギリスおよびアメリカでリリースされた。レーベルはフリースタイル・ダスト / ヴァージン・レコード(イギリス)およびアストラルワークス(アメリカ)。

本作はビッグ・ビート、テクノ、アシッド・ハウス、サイケデリック・ロックの要素を組み合わせており、1990年代後半のビッグ・ビート・ムーブメントを代表する作品のひとつである。

制作の背景

トム・ローランズ(1971年生まれ、キングストン・アポン・テムズ)とエド・サイモンズ(1970年生まれ、オックスフォード)は1989年にマンチェスター大学在学中に出会った。当初はザ・ダスト・ブラザーズ(The Dust Brothers)として活動していたが、同名のアメリカ人プロダクション・デュオからの法的申し立てを受け、1995年にケミカル・ブラザーズと改名した。

デビュー・アルバム『エグジット・プラネット・ダスト(Exit Planet Dust)』(1995年)はボーカリストのベス・オートン(Beth Orton)とザ・シャーラタンズ(The Charlatans)のティム・バーゲス(Tim Burgess)をフィーチャーし、全英アルバムチャートで9位を記録、サンプリングを多用したギター色のあるエレクトロニック・ミュージックという彼らのスタイルを確立した。

『ディグ・ユア・オウン・ホール』の録音は1996年から1997年にかけて、サウス・ロンドンのオリノコ・スタジオで行われた。制作にはRoland TB-303ベース・シンセサイザーおよびTR-909、TR-808ドラムマシンなどのハードウェアが使われた。本作もヴァージン・レコードの子レーベルであるフリースタイル・ダストのもとで完全な制作自由度を持って自主プロデュースされた。

解説

本作は全英アルバムチャートで1位、全米ビルボード200で14位を記録し、前作を大きく上回る商業的成果を収めた。

プロダクションはビッグ・ビート、アシッド・ハウス、ヒップホップのブレイクビート、サイケデリック・ロックを基盤とする。

楽器編成の中心はRolandのドラムマシンとTB-303ベース・シンセサイザーで、ソウル、ファンク、ロックのレコードからのサンプルと組み合わせて用いられている。楽曲の多くは慣例的な歌形式ではなく、長尺のグルーヴ構造となっている。

リリース当時も好意的な評価を受け、遡及的にも1990年代エレクトロニック・ミュージックの歴史的評価においてビッグ・ビート時代の決定的な記録として一貫して言及されている。

音楽史的な観点から見ると、本作はパブリック・エネミー(Public Enemy)に代表されるヒップホップのサンプリング美学、イギリスのアシッド・ハウス第一波およびデトロイト・テクノ、1980年代末〜1990年代初頭のサイケデリック・ロックとマッドチェスター・サウンドを源泉としている。

ザ・プロディジー(The Prodigy)の『ザ・ファット・オブ・ザ・ランド(The Fat of the Land)』(1997年)、ファットボーイ・スリム(Fatboy Slim)の『ユーヴ・カム・ア・ロング・ウェイ、ベイビー(You’ve Come a Long Way, Baby)』(1998年)と並んでビッグ・ビート・ムーブメントの商業的ピークを象徴する作品である。

ケミカル・ブラザーズはその後も作品を発表し続け、『サレンダー(Surrender)』(1999年)以降はより幅広いエレクトロニック・サウンドへと展開していった。

楽曲解説

「Block Rockin’ Beats」(5:14)は1997年リリースのシングル。バーナード・パーディ(Bernard Purdie)のドラム、23スキドゥー(23 Skidoo)のベースライン、スクーリー・D(Schoolly D)のボーカル・サンプルを組み合わせて構成されている。全英シングルチャートで1位を記録し、第40回グラミー賞(1998年)でベスト・ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス部門を受賞した。

「Dig Your Own Hole」(5:27)はタイトル・トラック。ブレイクビートに重なるTB-303のベースラインを中心とし、アルバム中でもっともアシッド・ハウスの影響が明示的な楽曲のひとつ。

「Elektrobank」(8:18)は高テンポで打楽器層の密度が高く、メロディー的なコンテンツは最小限。3枚目のシングルとして全英17位を記録。スパイク・ジョーンズ(Spike Jonze)監督のミュージック・ビデオが制作された。

「Piku」(4:54)は加工されたシンセサイザーの音色を素材とする短い経過的なトラック。

「Setting Sun」(5:29)はオアシス(Oasis)のノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)がギターとボーカルで参加し、ビートルズの「Tomorrow Never Knows」(1966年)のドラム・パターンの加工済みサンプルを基盤とする。アルバムに先行して1996年にリリースされた1枚目のシングルで、全英シングルチャートで1位を記録した。

「It Doesn’t Matter」(6:14)は周囲の楽曲より遅くメロディー的にも発展しており、シンセサイザーと並んでライブ・ギターが使われている。

「Don’t Stop the Rock」(4:50)はファンク・サンプルとエレクトロニックなパーカッションを組み合わせた高エネルギーな楽曲。

「Get Up on It Like This」(2:47)はベースを強調した短めのグルーヴ指向の楽曲。

「Lost in the K-Hole」(3:52)はミニマルなリズム枠組みの上で反復的・催眠的な構造を持つ楽曲。

「Where Do I Begin?」(6:56)はベス・オートン(Beth Orton)がボーカルを担当し、アルバム中でもっとも歌的な構造を持つ楽曲。

「The Private Psychedelic Reel」(9:22)はクロージング・トラックで、サイケデリック・ロックの影響がもっとも明示的に現れており、約9分にわたって複数の異なるセクションを経由する。

収録曲

収録時間:約63分22秒。

Side One

  1. “Block Rockin’ Beats” – 5:14
  2. “Dig Your Own Hole” – 5:27
  3. “Elektrobank” – 8:18
  4. “Piku” – 4:54
  5. “Setting Sun”(ノエル・ギャラガー参加) – 5:29

Side Two

  1. “It Doesn’t Matter” – 6:14
  2. “Don’t Stop the Rock” – 4:50
  3. “Get Up on It Like This” – 2:47
  4. “Lost in the K-Hole” – 3:52
  5. “Where Do I Begin?”(ベス・オートン参加) – 6:56
  6. “The Private Psychedelic Reel” – 9:22

人員

ケミカル・ブラザーズ

  • トム・ローランズ – プロダクション、プログラミング、シンセサイザー、サンプリング
  • エド・サイモンズ – プロダクション、プログラミング、シンセサイザー、サンプリング

ゲスト

  • ノエル・ギャラガー(オアシス) – ギター、ボーカル(”Setting Sun”)
  • ベス・オートン – ボーカル(”Where Do I Begin?”)
  • DJ Kool Herc – イントロ・ボーカル(”Elektrobank”)
  • Keith Murray – サンプリング・ボーカル(”Elektrobank”)
  • Ali Friend – ベース(”Dig Your Own Hole” / “Elektrobank”)
  • Seggs – ベース(”Lost in the K-Hole”)
  • Jonathan Donahue(Mercury Rev) – クラリネット(”The Private Psychedelic Reel”)
  • Simon Phillips – ドラム

テクニカル

  • プロデュース:ケミカル・ブラザーズ
  • エンジニアリング:スティーヴ・ダブ(Steve Dub)、Jon Collyerほか
  • マスタリング:Mike Marsh(Metropolis Studios、ロンドン)



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