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ももいろクローバーZ: 5TH DIMENSION(2013年)

概説

『5TH DIMENSION』(フィフス・ディメンション)は、日本の女性アイドルグループ、ももいろクローバーZによる2作目のスタジオ・アルバムである。2013年4月10日にスターチャイルド(キングレコード)から発売された。

「進化」を主題としたコンセプト・アルバムである。EDM、ヒップホップ、ラテン、シンフォニック・ロックなど幅広い音楽ジャンルを横断的に取り入れ、前作『バトル アンド ロマンス』(2011年)のハイパーポップ的な方向性を拡張・深化させた作品である。

オリコン週間アルバムチャートでグループ初の1位を獲得し、初週売上約18.0万枚、累計約24万枚を記録した。日本レコード協会からプラチナディスク認定(出荷25万枚以上)を受け、2013年度年間アルバムチャート22位となった。読売新聞が2018年に発表した「J-POP平成の名盤30」にも選出されている。曲順に明確な物語的連続性が持たせられており、メンバーはシャッフルせずに通して聴くことを強く推奨した。

発売に先立ち、全国アリーナツアー『ももいろクローバーZ JAPAN TOUR 2013「5TH DIMENSION」』が実施され、アルバム全曲を収録順どおりに、MCなしで披露するという実験的な演出が行われた。

ビジュアル面では、笑顔を消し、顔を覆うトゲ付きマスクを装着した「進化形態」の姿が提示され、アイドルとしての既成イメージを意図的に撹乱した。

制作の背景

ももいろクローバーZは、芸能事務所スターダストプロモーション所属の女性アイドルグループである。2008年に6人組の「ももいろクローバー」として結成され、2011年に早見あかりが脱退した後、「ももいろクローバーZ」に改名した。改名後初のフルアルバム『バトル アンド ロマンス』(2011年)はオリコン週間アルバムチャートで最高3位(再発時に2位に更新)を記録し、累計約18万枚を売り上げた。また、全日本CDショップ店員組合が選出する第4回CDショップ大賞で大賞(邦楽部門)を受賞し、アイドルグループとして初の快挙となった。

同作はキャッチーでエネルギッシュな楽曲群によってグループの基礎を固め、昭和歌謡由来の哀愁を帯びたメロディと多彩な音楽要素を組み合わせるスタイルを確立した。これに対し本作『5TH DIMENSION』は、その路線を維持しつつ、音楽的な完成度とコンセプト性を大きく高めた進化形として位置づけられる。前作が多様な楽曲を「詰め合わせ」た性格を持っていたのに対し、本作では初めてグループが楽曲の世界観に「寄せて」いく方向性が明確化された。

コンセプトは「5次元への進化」であり、仮想空間から宇宙、労働、戦争、再生、そして灰からの再出発へと至る物語の流れが設定されている。アートワークもこの進化を視覚化し、第1形態から第3形態(トゲ付きマスク)へと段階的に変化する姿が示された。

制作には前山田健一(ヒャダイン)の関与が前作より減少し、TeddyLoid、NARASAKI、アメリカのロックバンドOK Goのダミアン・クーラッシュ、布袋寅泰、大槻ケンヂ、いとうせいこうなど、多様な外部クリエイターが参加した点が特徴的である。これにより、アイドル音楽の枠を超えた音響的・構造的実験が推進された。

制作手法と音楽的特徴

本作の音楽的多様性は、楽曲自体の多彩なスタイル(シンフォニック・ロック、ヒップホップ、EDM、ラテン、3拍子バラードなど)と、それらを支える編曲・プログラミングの妙によって成立している。電子音響(ダブステップのドロップ、ゲート処理されたビート、シンセサイザーのレイヤー)と生楽器(オーケストラ、ブラス、ギター、メロトロン)が各曲の性格に応じて混在し、全体として過剰に作り込まれたような音響を形成している。

シングル曲のリマスタリングにより、アルバム内での音圧・質感の統一が図られている。

メンバーのヴォーカルは、従来のユニゾン中心からパート分け・ソロ・ラップへの多様化が進み、曲の物語的役割に応じて歌い方が調整された。

評価

発売当時、コンセプトの難解さやジャンルの飛躍に対して賛否が分かれた。従来のキャッチーさを期待したリスナーからは批判的な声もあったが、ローリングストーン日本版(南波一海)は4/5点を与え、「曲と曲が切り結んで互いが高め合い、アルバムとして形にする必然を強く感じさせる」と評価した。Billboard JAPANも肯定的に受け止め、シングル曲がアルバムの文脈でより有機的に響く点を指摘した。

海外レビューでは、アメリカの音楽サイトのSputnikmusicが「今年最も楽しく愉快なポップ・アルバムの一つ(one of the most fun and entertaining pop albums of the year)」と称賛し、ダブステップからクラシックまでを横断する冒険性を評価した。一方、ジャパンタイムズ紙のイアン・マーティンは、コンセプトとしては散漫で、進化というより再出発の試みとしつつ、個々の楽曲の魅力を認めた。

後年の再評価では、アイドル音楽におけるコンセプト・アルバムの先駆けとして、また2010年代前半のJ-POPにおけるジャンル横断的な実験の到達点として位置づけられることが多い。商業的成功と芸術的野心の両立を示した作品として、グループのキャリアの転換点を成している。

楽曲解説

1.「Neo STARGATE」(作詞:森由里子/作曲:大隅知宇/編曲:TeddyLoid)

8分19秒の大作。イントロにカール・オルフ『カルミナ・ブラーナ』の合唱曲「おお、運命の女神よ」をサンプリングし、合唱団とオーケストラによる荘厳な序曲が展開する。約2分半を経てメンバーのヴォーカルが登場し、うねるようなブレイクビーツと攻撃的なベースラインが徐々に前面に出る。EDM/ダブステップのドロップが核心を成し、電子音響のノイズと合唱が渾然一体となる。SF的な「スターゲート」のモチーフが歌詞に織り込まれ、5次元への入口を象徴する。

2.「仮想ディストピア」(作詞:只野菜摘/作曲・編曲:AKIRASTAR)

ギター主導のアップテンポなJ-POP。西川進のギター、川島弘光のベース、山縣亮のドラムを基調とし、プログラミングがそれを補強する。サビを全員ユニゾンではなく2パートに分けた初の試みが特徴で、ポリフォニックな厚みを生む。歌詞は東日本大震災で被害を受けた宮城県女川町をイメージし、ボブ・ディラン「風に吹かれて」へのオマージュを交えつつ、瓦礫からの再生と「仮想空間からの脱出」を描く。

3.「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」(作詞・作曲・編曲:前山田健一)

7thシングル。TVアニメシリーズ『モーレツ宇宙海賊』のオープニングテーマとして使用された。シンフォニック・ロックの骨格に、激しい展開とキーチェンジを詰め込む。マーティ・フリードマンのリードギターが加わり、オーケストラと合唱が壮大さを増幅する。構成は短時間に多次元的な変化を遂げ、ポップでありながら荘厳かつ混沌とした印象を与える。宇宙的な無限の愛をテーマとし、物語のスケールを拡大する。

4.「5 The POWER」(作詞:いとうせいこう/作曲・編曲:MURO・SUI)

パブリック・エナミー「Fight the Power」へのオマージュと、ハンガリーの歌手コンツ・ジュジャの楽曲「Visz a vonat」のサンプリングを基盤とするヒップホップ曲。メンバーが交互にラップを披露し、キャッチーなフックと切り替わる。グルーヴはファンキーで攻撃的であり、アイドル・ラップの枠を超えた完成度を示す。

5.「労働讃歌」(作詞:大槻ケンヂ/作曲・編曲:Ian Parton)

6thシングル。イギリスのロックバンド、ザ・ゴー!チーム(The Go! Team)のイアン・パートンが作曲。ファンキーなリズム・セクションと生のブラス(トロンボーン、トランペット)、メンバーによるラップを含む労働歌

6.「ゲッダーン!」(作詞:下地悠/作曲・編曲:Damian J. Kulash Jr.)

ダミアン・クーラッシュによるエレクトロ・ポップ。全楽器をクーラッシュが演奏・プログラミングし、バブルガム的な軽快さと電子的な質感を両立させている。

7.「Z女戦争」(作詞・作曲:ティカ・α/編曲:近藤研二)

8thシングル。やくしまるえつこがティカ・α名義で提供した曲。ストリングス(チェロ、ヴィオラ、コントラバス)、オーボエ、ブラス、ドラムが絡み合う複雑な編曲。歌詞は学園生活を送りながら敵と戦う日々について歌っている。

8.「月と銀紙飛行船」(作詞:岩里祐穂/作曲・編曲:永井ルイ)

ゆったりとしたテンポと叙情的なメロディによる、グループ初の全編3拍子のバラード。冒頭にメロトロンが使用され、1960年代ブリティッシュ・ロック的なロマンティシズムを湛えている。

9.「BIRTH Ø BIRTH」(作詞:前田たかひろ/作曲:NARASAKI/編曲:NARASAKI・ゆよゆっぺ)

EDM/ダブステップを基調とした再生のテーマ曲。MVでは進化形態の変化が描かれる。「DNA狂詩曲」(7thシングル「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」のカップリング曲)のアンサーソングとしても位置づけられ、電子音響のドロップと強い意志を感じさせるメロディが特徴である。

10.「上球物語 -Carpe diem-」(作詞:zopp/作曲・編曲:横山克)

ラテンミュージックの要素を取り入れた楽曲。ブラス、パーカッション、キーボードが陽気なリズムを形成する。「上京」をもじった「上球」(地球への旅)と、「カルペ・ディエム(その日を摘め)」、「メメント・モリ(死を想え)」、「ケ・セラ・セラ(なるようになる)」などの成句が歌詞に織り込まれる。ライブでは間奏の即興ダンスが見せ場となる。

11.「宙飛ぶ!お座敷列車」(作詞:桑原永江/作曲:佐藤晃/編曲:長谷川智樹)

ブラス・セクションとナレーション(石丸謙二郎)を特徴とする楽曲。昭和的なお座敷列車のイメージを宇宙的なスケールに拡張している。

12.「サラバ、愛しき悲しみたちよ」(作詞:岩里祐穂/作曲・編曲:布袋寅泰)

9thシングル。布袋寅泰のギターを前面に押し出したロック・ナンバー。日本テレビ系ドラマ『悪夢ちゃん』の主題歌として使用された。第75回ザテレビジョンドラマアカデミー賞のドラマソング賞を受賞。

13.「灰とダイヤモンド」(作詞:只野菜摘/作曲:前山田健一/編曲:近藤研二)

オーケストラを用いた壮大なバラード。これまでの軌跡と未来を描く歌詞を、息遣いが聞こえるほど前面に出たヴォーカルで歌う。物語の最終話として、灰からの再生を象徴する。

収録曲

合計約67:53(通常盤)。

  1. 「Neo STARGATE」 – 8:19
  2. 「仮想ディストピア」 – 4:09
  3. 「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『「無限の愛』」 – 5:12
  4. 「5 The POWER」 – 4:19
  5. 「労働讃歌」 – 4:38
  6. 「ゲッダーン!」 – 3:34
  7. 「Z女戦争」 – 6:56
  8. 「月と銀紙飛行船」 – 5:15
  9. 「BIRTH Ø BIRTH」 – 5:02
  10. 「上球物語 -Carpe diem-」 – 4:03
  11. 「宙飛ぶ!お座敷列車」 – 4:28
  12. 「サラバ、愛しき悲しみたちよ」 – 5:01
  13. 「灰とダイヤモンド」 – 6:51

(初回限定盤AにはボーナスCD、初回限定盤BにはMVを収録したDVDが付属。2013年8月にはLP盤も発売された。)

人員

ももいろクローバーZ

  • 百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、有安杏果、高城れに – ヴォーカル

主な作曲・編曲・プロデュース

  • TeddyLoid
  • AKIRASTAR
  • 前山田健一
  • MURO・SUI
  • Ian Parton
  • Damian J. Kulash Jr.
  • ティカ・α
  • 近藤研二
  • 永井ルイ
  • NARASAKI
  • ゆよゆっぺ
  • 横山克
  • 長谷川智樹
  • 布袋寅泰ほか

主な参加ミュージシャン

  • ギター:西川進、マーティ・フリードマン、板垣祐介ほか
  • ベース、ドラム、ブラス、ストリングス:多数
  • コーラス:東響コーラスほか
  • ナレーション:石丸謙二郎(「宙飛ぶ!お座敷列車」)

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