概説
『八重奏曲; 大アンサンブルのための音楽; ヴァイオリン・フェイズ(Octet; Music For A Large Ensemble; Violin Phase)』は、アメリカ合衆国の作曲家、スティーヴ・ライヒの作品を収録したアルバムである。1980年にECMレコードから発売された。
録音は1980年2月から3月にかけて行われ、演奏はライヒ自身が率いるアンサンブル、スティーヴ・ライヒ&ミュージシャンズ(Steve Reich and Musicians)が担当している。
本作には1960年代後半から1970年代後半にかけて作曲された3作品が収録されている。ライヒのミニマリズムの作風の発展を示す重要な録音である。
反復、位相変化(フェイジング)、安定したパルス、和声の循環といったライヒの作風の特徴が、多彩な編成のアンサンブルによって表現されている。

作曲者の略歴
スティーヴ・ライヒ(1936年生)は、20世紀後半のミニマル・ミュージックを代表する作曲家の一人である。
ニューヨークで生まれ、コーネル大学やジュリアード音楽院で学び、その後ミルズカレッジでルチアーノ・ベリオに師事した。
1960年代半ばにテープ音楽作品『イッツ・ゴナ・レイン(It’s Gonna Rain)』(1965年)などで位相変化(フェイジング)の技法を発見し、以後この技法を楽器作品へ応用した。
1960年代後半から1970年代にかけて、『ピアノ・フェイズ(Piano Phase)』(1967年)、『ドラミング(Drumming)』(1971年)、『18人の音楽家のための音楽(Music for 18 Musicians)』(1974–1976年)などの作品によって国際的な評価を確立し、ミニマリズム運動の中心人物となった。
制作の背景
本アルバムは1978年のアルバム『18人の音楽家のための音楽』に続くECMでの録音として制作された。
録音はニューヨークのコロムビア・レコーディング・スタジオとドイツのトンストゥーディオ・バウアーで行われた。プロデューサーはECM創設者のマンフレート・アイヒャーが務めた。
収録曲
収録時間は約48分。
1. 大アンサンブルのための音楽(1978年)– 15:28
この作品は1978年に作曲され、オランダ音楽祭の委嘱によって書かれた。初演は1979年にユトレヒトで行われた。
編成はフルート、クラリネット、ソプラノ・サックス、トランペット、弦楽器、4台のピアノ、マリンバやヴィブラフォンなどの打楽器、女声を含む大規模なアンサンブルである。
楽曲は4つのセクションで構成され、メタロフォンによる和声の変化が構造の節目を示す。短い音型が徐々に拡大・縮小しながら重なり合い、鮮やかなリズムのテクスチュアを形成する。
2. ヴァイオリン・フェイズ(1967年)– 15:09
『ヴァイオリン・フェイズ』は1967年に作曲された、ライヒによる位相変化の作品の代表作である。
通常は4台のヴァイオリン、またはヴァイオリンとテープによって演奏される。複数の演奏者が同じ旋律を演奏しながら徐々にテンポをずらしていくことで、新たなリズムや旋律のパターンが生まれる。
この作品は『ピアノ・フェイズ』に続いてライヒのフェイジング技法をより明確に提示した重要作である。
3. 八重奏曲(1979年)– 17:29
『八重奏曲』は1979年に作曲された室内楽作品である。1983年に『エイト・ラインズ(Eight Lines)』として改訂された。
弦楽四重奏と2台のピアノ、そしてクラリネット、バスクラリネット、フルート、ピッコロをそれぞれ演奏する2人の木管楽器奏者のために作曲された曲である。
この作品は透明感のある和声とパルスの重なりが特徴で、ピアノと木管楽器が作り出す持続的な音型が徐々に発展していく構造を持つ。
リリース履歴
本アルバムは1980年にLPとして発売され、その後1987年にCDとして再発された。
