概説
『サルク(Sulk)』はヴォーカリストのビリー・マッケンジー(vocals)とマルチ奏者のアラン・ランキン(guitar, keyboards, others)によって1979年にダンディーで結成されたスコットランドのポップバンド、アソシエイツ(The Associates)の2作目のスタジオ録音アルバムである。
制作の背景
アソシエイツは1979年にデイヴィッド・ボウイ(David Bowie)の「Boys Keep Swinging」の非公認カヴァーをデビューシングルとして発表し、その後、「ニューロマンティック」や「ニューポップ」などの1980年代初頭のイギリスを中心とするポピュラー音楽のムーヴメントを背景として、アート・ロックやグラムロック、ディスコ、古いキャバレー音楽に影響を受けたスタイリッシュなシンセポップで知られるようになった。
解説
『サルク』は1982年にイギリスではベガーズ・バンケット・レコードから、その他のヨーロッパの国ではWEAレコードから、アメリカ合衆国ではサイアー・レコードからそれぞれ発売され、全英アルバムチャートで10位を記録した。
本作はアソシエイツの商業的に最も成功したアルバムであり、オリジナルのメンバーによる最後のアルバムである。
本作は、マッケンジーの独特の高いテノールの声によるオペラ的なヴォーカル、煌びやかなシンセとキーボード、エコーエフェクトとリヴァーブを用いた幽玄なサウンド、金属的なドラム音、ディスコ的なダンスビートを特徴とする、耽美的なシンセポップの傑作である。
マッケンジーの歌唱スタイルは、デイヴィッド・ボウイやブライアン・フェリー(Bryan Ferry)、スパークス(Sparks)のラッセル・メイル(Russell Mael)、スコット・ウォーカー(Scott Walker)からの影響を示している。
本アルバムではオーストラリアのドラム奏者のジョン・マーフィーがドラムを、元ザ・キュアー(The Cure)のメンバーだったマイケル・デンプシーがベースを、それぞれ弾いている。カナダのロックバンド、マーサ・アンド・ザ・マフィンズ(Martha and the Muffins)のマーサ・ラドリーがバック・ヴォーカルとキーボード担当として参加している。
ヒットシングル2曲、「Party Fears Two」(全英チャート9位)と「Club Country」(全英チャート13位)を収録。
本アルバムの米国/欧州版はオリジナルのイギリス/カナダ版とは収録曲が異なっている。
2000年のリマスター版はオリジナルのイギリス版に準拠しており、両A面シングル「18 Carat Love Affair/Love Hangover」(全英チャート21位)を含むボーナス・トラック7曲を収録している。
「Love Hangover」はダイアナ・ロス(Diana Ross)の1976年のヒットシングルのカヴァー。
「Gloomy Sunday(暗い日曜日)」はハンガリーのピアニスト・作曲家のシェレシュ・レジェー(Seress Rezső)が作曲し、1933年に出版されたポピュラーソングのカヴァー。
イギリスの音楽誌『メロディ・メイカー』は『サルク』を1982年のアルバム・オブ・ジ・イヤーに選出した。
BMGは2016年に本アルバムのCD2枚組のデラックス・エディションを発売した。
2022年に本アルバムの40周年記念のデラックス・エディション(3CD+LP)がBMGから発売された。