概要
『コンピューター・ワールド』(英語タイトル: Computer World、ドイツ語タイトル: Computerwelt)は、ドイツの電子音楽グループ、クラフトワーク(Kraftwerk)による8作目のスタジオ録音アルバムである。
コンピュータ技術を基盤にした情報化社会の到来を主題としたコンセプト・アルバムである。


制作の背景
クラフトワーク(ドイツ語発音: クラフトヴェルク)は1970年に西ドイツのデュッセルドルフでラルフ・ヒュッター(voice, synthesizers, keyboards)とフローリアン・シュナイダー(voice, synthesizers, flutes)によって結成された。
1970年代初頭はいわゆるクラウトロックの文脈で即興性の強い演奏、反復的なリズム、電子処理された音響を組み合わせた実験的なロックを展開していた。
この時期はフルートやオルガンなどの生楽器も重要な役割を担っていた。
1974年のアルバム『アウトバーン(Autobahn)』で長尺の楽曲構造、明確な主題設定、規則的なビート、簡潔なメロディーが導入され、初期の実験的なクラウトロックのスタイルから主にシンセサイザーとドラムマシンで構成されるポップなエレクトロニック・サウンドへの移行が明確になった。
『放射能(Radio-Activity)』(1975年)以降、バンドは一貫して「コンセプト・アルバム」路線を採用する。
『放射能』は電波と原子力という二重テーマを扱っており、『ヨーロッパ特急(Trans-Europe Express)』(1977年)はヨーロッパ横断特急(略称TEE)を題材としている。『人間解体(The Man-Machine)』(1978年)は人間と機械の関係を主題としている。
解説
アルバム『コンピューター・ワールド』は1979–1981年にデュッセルドルフのクリング・クラング・スタジオで録音され、1981年にクリング・クラング(ドイツ)、EMI、ワーナー・ブラザース・レコード(米国、カナダ)からLPとカセットでリリースされた。
プロデュースはラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーが担当した。
過去の2作のアルバムと同様に、『コンピューター・ワールド』もドイツ語版と英語版の両方がリリースされた。
本作はドイツのアルバムチャートで7位、全英アルバムチャートで15位、全米ビルボード200で72位を記録した。
本アルバムは1970年代末におけるコンピュータ技術の普及と情報社会化の進展を背景として制作されており、通信ネットワークや電卓、家庭用コンピュータなどを題材としている。ただし、本作の制作においてはコンピュータは使用されていない。主な制作ツールはアナログ・シンセサイザー、ハードウェア・シーケンサー、ドラムマシン、ボコーダーなどである。
本作は、均質なテンポ、機械的なリズム、簡潔なメロディー、反復構造を基本とする。音響的には、主にアナログ・シンセサイザーによる明瞭で硬質な音色が特徴である。
音楽史的な観点から見ると、本作は電子音楽のポピュラー化とクラブ・ミュージックの形成における重要な参照点である。本作のダンサブルでファンキーなサウンドがヒップホップやエレクトロ、後のエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)全般に与えた影響は大きい。
遡及的な評価として、『コンピューター・ワールド』は後のテクノやハウス・ミュージックにおけるリズム構造および音響設計の先駆と見なすことができる。その影響はホアン・アトキンス(Juan Atkins)などのデトロイト・テクノに特に顕著に見られる。
『ローリング・ストーン』誌は2012年に『コンピューター・ワールド』を史上最高のEDMアルバムの10位にランク付けした。
「Pocket Calculator」は1981年にシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで39位を記録した。この曲は英語版とドイツ語版の他にフランス語版「Mini Calculateur」と日本語版「Dentaku(電卓)」も制作された。
1981年に両A面シングルとしてリリースされた「Computer Love / The Model」は全英シングルチャートで1位を記録した。
2009年に本アルバムのリマスター版がCD・LP・デジタル配信でリリースされた。
収録曲
収録時間は34分25秒。
Side One
- “コンピューター・ワールド / Computer World” (“Computerwelt”) – 5:05
- “ポケット・カルキュレーター / Pocket Calculator” (“Taschenrechner”) – 4:55
- “ナンバーズ / Numbers” (“Nummern”) – 3:19
- “コンピューター・ワールド2 / Computer World 2” (“Computerwelt 2”) – 3:21
Side Two
- “コンピューター・ラヴ / Computer Love” (“Computer Liebe”) – 7:15
- “ホーム・コンピューター / Home Computer” (“Heimcomputer”) – 6:17
- “コンピューターはボクのオモチャ / It’s More Fun to Compute” – 4:13
人員
Kraftwerk
- Ralf Hütter – voice, vocoder, synthesizer, keyboards, Orchestron, Synthanorma Sequenzer, electronics, software
- Florian Schneider – vocoder, speech synthesis, synthesizer, electronics, software
- Karl Bartos – electronic drums, software
- Wolfgang Flür – software
