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Albert Ayler: Albert Ayler in Greenwich Village (1967)

概説

『グリニッチ・ヴィレッジのアルバート・アイラー(Albert Ayler In Greenwich Village)』は、アメリカのサックス奏者アルバート・アイラー(Albert Ayler)による1967年リリースのライブ・アルバムである。インパルス!レコード(Impulse! Records)からの最初のリーダー作であり、1966年12月18日のヴィレッジ・ヴァンガード(Village Vanguard)公演と1967年2月26日のヴィレッジ・シアター(Village Theatre)公演の録音から抜粋された4曲で構成される。全長約37分。アイラーのインパルス!時代の作品の中で、批評的な評価が特に高い一枚である。

制作の背景

1936年オハイオ州クリーヴランド生まれのアルバート・アイラーは、軍楽隊での経験を経てヨーロッパで活動を始め、1960年代半ばにニューヨークのアヴァンギャルド・ジャズ・シーンに参入した。ESPディスクでの『スピリチュアル・ユニティ(Spiritual Unity)』(1965年)などで、聖歌・民謡・マーチ・子守唄に由来する簡素なメロディと、激しい集団即興・拡張された音色を対置させる独自の語法を確立していた。

ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の強い推薦により、インパルス!はアイラーとの契約を結んだ。コルトレーンの助言に従い、スタジオ録音ではなくライブ録音が優先された。1966年12月18日のヴィレッジ・ヴァンガード公演にはコルトレーン自身が客席にいたとされ、翌1967年2月26日のヴィレッジ・シアター公演では、アイラーがコルトレーンに捧げた「For John Coltrane」が演奏された。両公演とも複数のベーシストを起用した編成で、弦楽器(ヴァイオリンまたはチェロ)を加え、音色の厚みとテクスチャーの多様性を追求している。プロデューサーはボブ・シエル(Bob Thiele)、エンジニアはジョージ・クラビン(George Klabin)。

本作以降、同公演の未発表テイクは『The Village Concerts』(1978年)に収録され、さらに1965年のヴィレッジ・ゲート録音などを加えた完全版『Live in Greenwich Village: The Complete Impulse Recordings』(1998年)としてまとめられた。

解説

本作は、アイラーの音楽の核心である「単純な主題と過激な即興の対比」を、二つの異なる編成で鮮やかに示している。A面(ヴィレッジ・シアター)はアルト・サックスを中心とした比較的室内楽的な響き、「Change Has Come」ではより密度の高い集団即興が展開される。B面(ヴィレッジ・ヴァンガード)はテナー・サックスと弟ドナルド・アイラー(Donald Ayler)のトランペットを軸とした、より集団的で行進曲的なエネルギーが特徴である。両セッションとも二人のベーシストを配置することで、低音部の厚みと安定した基盤を確保し、リード楽器の過激な表現を支えている。

音楽構造は、明確なテーマ提示から始まり、集団即興へと展開し、しばしばテーマに回帰する。固定された和声進行や拍子に縛られず、パルスを共有しつつ自由に音響空間を拡張する手法は、オーネット・コールマン以降のフリージャズを基盤としつつ、アイラー固有の「聖歌的・祝祭的」な性格を強く帯びている。音色は、広いビブラート、アルティッシモ域の叫び、金属的なノイズ、肉声を思わせる咆哮など、サックスの限界を押し広げる。弦楽器の介入は、クラシック的なテクスチャーとフリーなポリフォニーを融合させ、全体に独特の色彩を与える。

各曲解説

「For John Coltrane」(13:32): 1967年2月26日ヴィレッジ・シアター録音。アイラーが久々にアルト・サックスを手にした、コルトレーンへの献呈曲。チェロ(ジョエル・フリードマン)、二人のベース(アラン・シルヴァ、ビル・フォルウェル)、ドラムス(ビーヴァー・ハリス)による編成。冒頭は比較的抑制された、哀しみを帯びた歌い回しで始まり、徐々に音量が膨らみ、アルト特有の鋭い高域と、アイラーらしい広いビブラートが交錯する。ドラムスの介入を抑えた空間的な響きの中で、弦楽器とベースが持続音や断片的な応答を織りなし、全体として瞑想的かつ荘厳な性格を持つ。コルトレーンの晩年のスピリチュアルな探究を意識した、静かでありながら内的な緊張を孕んだ演奏である。

「Change Has Come」(6:15): 同日ヴィレッジ・シアター録音。前曲と同じ編成(アルト・サックス、チェロ、二人のベース、ドラムス)による激しい即興曲。テーマ提示の後、急速に密度の高い集団即興へと移行する。サックスの叫びと弦・ベースの不協和な絡み合いが特徴である。エネルギーが集中し、短めながらも強い衝撃を残す。

「Truth Is Marching In」(12:12): 1966年12月18日ヴィレッジ・ヴァンガード録音。テナー・サックス(アルバート)、トランペット(ドナルド)、ヴァイオリン(ミシェル・サンプソン)、二人のベース(ヘンリー・グライムス、ビル・フォルウェル)、ドラムス(ビーヴァー・ハリス)。ニューオーリンズのマーチング・バンドや聖歌の響きを想起させる、行進曲風の主題が明確に提示される。主題の反復と変形を経て、激しい集団即興へと爆発する。アイラーのテナーが肉声のような咆哮を放ち、ドナルドのトランペットが呼応し、ヴァイオリンが鋭い線を描く。アルバム中最も長く、祝祭性と荒々しさが同居する代表的な演奏。

「Our Prayer」(4:28): 同日ヴィレッジ・ヴァンガード録音。ドナルド・アイラーの作曲。前曲と同じ編成。比較的短い、祈りの性格を帯びた曲。簡素な主題が静かに提示され、徐々に密度を高めつつも、全体として内省的で荘厳な佇まいを保つ。行進曲的なエネルギーを抑え、スピリチュアルな側面を前面に出したクロージング・トラック。

評価

リリース当時から高く評価され、1968年の『ダウンビート』誌でピート・ウェルディングが5つ星を与え、「アイラーとその仲間たちが自ら秩序ある宇宙を創造している」「アヴァンギャルドのジョニー・ドッズ」と評した。スコット・ヤナウ(AllMusic)は「インパルス!に残したアルバムとしては恐らく最高傑作」と位置づけ、『ペンギン・ガイド・トゥ・ジャズ』も完全版を高く評価している。商業的成功は限定的だったが、1960年代後半のフリージャズにおける重要なライブ記録として、現在でも必聴盤の一つとされる。

収録曲

収録時間:合計約37分28秒。

Side One

  1. “For John Coltrane” – 13:32
  2. “Change Has Come” – 6:15

Side Two

  1. “Truth Is Marching In” – 12:12
  2. “Our Prayer” (Donald Ayler) – 4:28

(表記時間はオリジナルLP盤に基づく。再発盤では若干の差異がある)

録音:1966年12月18日 ヴィレッジ・ヴァンガード(3, 4)、1967年2月26日 ヴィレッジ・シアター(1, 2)、ニューヨーク。

人員

演奏

  • アルバート・アイラー(Albert Ayler) – アルト・サックス(1, 2)、テナー・サックス(3, 4)
  • ドナルド・アイラー(Donald Ayler) – トランペット(3, 4)
  • ジョエル・フリードマン(Joel Freedman、クレジットではJoel Friedmanとも) – チェロ(1, 2)
  • ミシェル・サンプソン(Michel Sampson) – ヴァイオリン(3, 4)
  • アラン・シルヴァ(Alan Silva) – ベース(1, 2)
  • ビル・フォルウェル(Bill Folwell) – ベース(全曲)
  • ヘンリー・グライムス(Henry Grimes) – ベース(3, 4)
  • ビーヴァー・ハリス(Beaver Harris) – ドラムス(全曲)

テクニカル

  • ボブ・シエル(Bob Thiele) – プロデューサー
  • ジョージ・クラビン(George Klabin) – エンジニア
  • ナット・ヘントフ(Nat Hentoff) – ライナーノーツ
  • チャールズ・スチュワート(Charles / Chuck Stewart) – 写真
  • ロバート&バーバラ・フリン(Robert & Barbara Flynn) – デザイン

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